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【やさしい教師のいじめかた3】

どうも、SS担当タイヤキです。

最近ずっとイベント告知ぐらいしかできてなかったのですが、
ようやく、普通にSSを投稿です\(^0^)/

そういえば、今期のアニメは結構良作作品多いですね!!
でも、SHIROBAKOといい、クロスアンジュといい……結城友奈は勇者であるでさえ、ちょっと重いですね!!
話は面白いけど、面白いけど!!(二回言う)
逆に、プリパラとプリキュアががが……最近、かしこま欠乏症です(らぁらちゃんが可愛すぎてつらい)

さて、SSの方ですがタイトルからお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、
「なのは先生と学生フェイトちゃん」の話です。
今回もなのは先生の出番少ないです……でも、フェイトちゃんが頑張ってるから(白目
なんとなくで始めたお話しですが、なんとなく続いていきそうです(笑)

では、続きからどうぞ(※百合注意)
----------------------------------------------------
【やさしい教師のいじめかた3】
 
     ◇◆◇
 
『なぇ、フェイトちゃん、うちと友達になってくれへん?』
 
 不安そうに揺れる瞳に、フェイトが笑顔で頷く。
 陽のあたる明るい教室ではやてが笑っている────大輪のひまわりのような笑顔。
 
 懐かしい夢。
 フェイトは自分が夢を見ている事にすぐに気づいた。
 
 はやては小学五年生の頃に自分の通う学校へ転校してきた。ちょうど雪が降り始めて、登下校が辛くなってきた頃だったと記憶している。
 当時、学級委員だったフェイトは転入してきたばかりのはやての面倒を色々見ていたせいか、すぐに懐かれてしまったような気がする。
 しかし、今になって思うと単に彼女が人懐っこいだけだったのかもしれない。
 
 
 
 ────Pi Pi Pi、Pi Pi Pi……
 
 耳障りな電子音で目を開けると、窓から差し込む朝日ですっかり明るくなった天井が視界に入った。そのまま腕だけ伸ばして、目覚まし時計のアラームを止める。
 
 懐かしい夢だった──まだはやてと知り合って間もない頃の夢。
 あの頃はまだ自分も”素直な良い子”だったな、と体を起こしながらフェイトは皮肉な笑みをつくる。
 はやてが夢に出てきたのは、おそらく偶然ではない。なのは先生が来て、毎日学校へ行くようになってから、はやての絡み方が今までよりも積極的になった。きっとその影響が夢にまで現れたのだろう。
 本音を言えばフェイトとしては、なのは先生にご登場願いたかった所なのだが……。
 
「まぁ、出てきたものは仕方がない」
 
 フェイトは寝ぼけた頭でそうぼやくと、起き上がって服を着替える。
 別に昔のはやては今と違って素直で可愛かったから、気分は悪くない。むしろ、小学生の頃のはやてはお人形のように可愛かったから、夢の中とはいえ、再びその姿を見れて嬉しくさえ思えた。
 
「いってきまーす!」
 
 フェイトの声が家の中に響き渡る。その綺麗で澄んだ声は、そのまま快晴の空へと消えて行った──胸に鼓動する希望と一緒に。
 
 
 
     ◇◆◇
 
「くそっ! くそっ!!」
 
 薄暗い部屋で、男の声とキーボードを打つ音だけがこだまする。
 
「何なのだ、アレは……あんな”規格外”」
 
 男は余程荒れている様子で、キーボードを叩く音がかなり荒々しい。
 
「……アレは本当に人間なのか!?」
 
 ガチャガチャと、まるでキーボードそのものが暴れまわっているのではないかと思うほどの音を立てながら、男はもう十時間以上そのキーボードを打ち続けている。
 
「くそっ!!! どうして、あの女の情報が何も掴めないのだ!?」
 
 目の下には濃い隈ができ、白い顎には濃いひげが伸びっぱなしになっている。うっすらと額に滲む汗からは、その男の焦り具合が窺えた。
 どうしてそこまで焦っているのか、その男以外は誰にもその理由は分からない。しかし、傍から見ているとまるで誰かに弱みを握られてでもいるかのような焦り様だ。
 
 ──ピロン
 
 メールの着信音に、その男は我に返る。パソコンのディスプレイを見るとトレイにメール着信を伝えるメッセージが表示されている。
 男はおもむろにマウスカーソルをそのメッセージ上に移動させると、一瞬だけ躊躇った後にマウスをクリックする。
 
「こ、これは…………!!」
 
 宛先の無いメール。
 そこに記されている内容に、男は驚きを隠せなかった。何度も、何度も繰り返し読み返す。
 
「くく……ハハハ、そういう事か……ククク……ハーハッハッハハ!!」
 
 男は腹を抱えて、だれも居ない薄暗い部屋の中で高笑いをする。
 どこの馬の骨とも分からない奴からのメールをそのまま鵜呑みにするつもりは無いが、これは突破口になる、とその男は直感的に感じていた。
 そして、こういう直感が最後に物をいう事を、この男は過去に何度も体験していた。
 
 カタ、カタ、カタ……
 
 淀みなくキーボードを叩く音が部屋の中を一杯にする。
 その音は、先ほどまでの荒々しいものではなく、清らかな川のような穏やかなものに変わっていた。
 どうやら、そのメールの内容は、その男にとって満足しうるものだったらしい。始終口元を大きく曲げた笑みを浮かべている。
 
 突然、男の指が止まった。
 その口元は更に大きくつり上がる。
 
「八神はやて……か」
 
 男はその名を口にすると、おもむろにパソコンの電源を切った────────。
 
 
 
     ◇◆◇
 
「あ、フェイトちゃん! おはよ~♪」
 
「……はやてか……おはよう」
 
「なんや、ツレナイなぁ~フェイトちゃん」
 
 気怠そうな友人の挨拶に、はやては少しつまらなそうに口を尖らせる。しかし、彼女の瞳の奥が僅かに光ったことを見逃さなかった。
 それだけで鼻歌を歌いたくなるぐらい嬉しくなる。
 最近、フェイトにちょっかいを出していた効果がでてきたのかもしれない、などと考えながら、はやてはチラリとすこし前を歩くフェイトを見る。
 見惚れてしまいそうな長くて綺麗な金髪が、楽しそうに踊っている。
 
「フェイトちゃん、何か良い事でもあった?」
 
 勘違いかもしれないが、今日のフェイトはいつも以上に歩調が軽やかな気がして、はやては訊ねずにはいられなかった……例え、聞いた所で本当の事を答えてくれなくても。
 フェイトの答えは悪戯な笑顔と「ナイショ♪」の一言だけ。でも、その表情はとても楽しそうで、五月の青空と相まって心が洗われるような爽やかさを覚える。
 
「えー……、そないな事言われると、余計気になってしまうわー……」
 
 うっかり見惚れてしまったことを誤魔化すように、はやては軽い口調でフェイトを非難するが、フェイトは全く気にしていない様子で、スタスタと一人で先へ歩き出してしまう。
 そんなフェイトをはやては慌てて追いかけるしかなかった。
 自分とフェイトとの距離は縮まっているのだろうか、それとも────そんな思いを胸に秘め、今日もはやての一日が始まる。
 
      ◇
 
 朝礼と一時間目の間の、休憩時間とも呼べないほんの僅かな時間でさえ、フェイトは隙あらばなのは先生の元へと駆けて行く。
 もうすっかり見慣れたはずのその後ろ姿は、けれど全然慣れなくて、彼女が先生を追いかける後姿を見る度に、はやては寂しい思いを募らせていた。
 
 そんな事などつゆ知らず、フェイトはなのはを見つけると、駆け寄って声をかける。
 
「なのは先生♪」
 
「フェイトちゃん、おはよう♪」
 
 いつもの優しい笑顔。その笑顔はいつもひまわりを連想させる──明るくて、暖かい。見ているだけで、こちらまで笑顔になってしまう。
 
「おはようございます!」
 
「にゃはは、フェイトちゃんは今日も元気だねぇ」
 
 先生にそう言われて、フェイトはまるで小学生のような自分の態度に、少し恥ずかしくなった。しかし、やられっぱなしでは気が済まないので、やり返す。
 
「先生は、今日も可愛いですね♪」
 
「ふぇ!!??!」
 
 そこまで驚かなくても、と言ったフェイトでさえビックリするほど、その一言でなのはの顔はまるで茹でタコのように真っ赤に染まった。それだけでは飽き足らず、手に持っていた書類をバサバサと床に広げてしまう始末。
 慌てて落としてしまった書類を拾うなのはの姿が可笑しくて、フェイトはクスクスと笑いながら、一緒になって書類拾う。
 たった一言。それでここまで動揺するのだから、本当に先生はからかい甲斐がある。そんな事を考えながら、フェイトは耳まで真っ赤にして書類を拾い続けるなのはを見つめていた。
 
「ああああ、ごめんね、フェイトちゃんにまで拾わせちゃって……」
 
 フェイトに迷惑をかけた罪悪感からか、そう言いながら、なのはは凄くしょんぼりしていて、フェイトは胸が痛くなった。
 
「いいんですよ、そんな事。そんなに気にしないでください」
 
 励ますように笑顔で伝える。極力明るい声になるように意識して。
 
「ありがとう、フェイトちゃん。……フェイトちゃんは本当に優しいよね♪」
 
 自然な口調でそう言われて、瞬間言葉を飲み込めなかった。
 しかし、なのはの言葉がジワジワとフェイトの心に染みわたっていくと、今度はフェイトが赤面する番だった。
 優しい? 私が?? そんな事ないし! と、心の中で精一杯の反論を繰り返すが、赤面した顔を見られたくなくて、フェイトは俯いたまま何も言えずにいた。
 その後、ぶっきらぼうに拾った書類をなのはに渡すと、フェイトは逃げるように自分の席に戻って行った。
 
      ◇
 
「ホント、最近なのは先生と仲いいよなぁ~……ちょっと妬けてしまうわぁ」
 
 すっかり習慣になったはやてとの昼食での会話。
 いつものように茶化しているのかと顔を上げれば、言った彼女は唇を尖らせていて、珍しい事もあるものだ、とフェイトは少し驚く。
 
「……別に、それを言うならはやてとだって、同じでしょ」
 
 弁当を摘まみながら、普段と同じトーンでそう言うと、「え?」とはやてから困惑とも驚きともとれる声が漏れる。
 
「だって、こんな風に一緒にお弁当食べるなんて、ちょっと前までは無かったじゃない」
 
 だから、少し補足的に言葉を加えた。
 ただ面と向かって話すには少し恥ずかしいので、目を合わせないように視線はお弁当から動かさないように努める。
 しばらくしてもはやてから何の反応も無い事を不審に思い、仕方なく目を上げると、そこには目を大きく見開いたまま固まっているはやての姿があった。
 箸を口に咥えたまま、今まで見たことがない程に開かれた瞳。その瞳とフェイトの瞳は確かにぶつかっているハズなのに、はやてはどこか違う所を見ているような気がする。
 能面のように無表情なまま固まっているはやての様子に、どこか不安を覚えたフェイトは心配そうに声をかける。
 
「はやて?……はやてってば!」
 
 声を少し荒げて名を呼ぶと、ようやく我に返ったようで、はやてはごっくんと口に入れたままだったご飯を飲み込む。
 
「も~……はやて、どうしちゃったの?」
 
「い、……いや~、ごめんフェイトちゃん。ちょっと考え事を……」
 
 ポリポリと頬を掻きながら苦笑いを浮かべるはやてを、フェイトは不審に満ちた瞳で問い詰める。
 
「ハハハ……お! フェイトちゃん、その卵焼き美味しそうやね~、いただき♪」
 
「あ、コラ!」
 
 はやてはその瞳から逃れるように、視線をフェイトの弁当箱へ移すと、見つけた卵焼きを軽やかに奪って、ひょいっと口の中へ放り込んだ。
 その後、ヤイヤイと言い争いになってしまい、結果として上手くはぐらかされてしまったフェイトは、はやてが固まっていた理由を聞き出すことは出来なかった。
 
 
 
     ◇◆◇
 
 そんな穏やかな日が過ぎて一週間。
 すっかりこの日常に慣れてきた頃、それは突然訪れた。
 
 帰りにクレープ屋に寄ろうと、いつものようにはやてに誘われたフェイトは、放課後のチャイムと同時に帰る準備をする。
 いつもならはやての方が先に準備を済ませて、フェイトの机へ迎えに来るのだが、今日は職員室に用事があるとかで、フェイトの方が先に準備が終わってしまった。仕方なく、はやてが戻ってくるのをぼんやり窓の外を見ながら待つ。
 
 しかし、いつまで待ってもはやては戻ってくる様子が無かった。
 もう五時を過ぎているし、今からクレープに行っていたら帰りが遅くなってしまう。治安が悪いこの地区で、自分はともかく、はやてをそんな遅い時間に帰らせるわけにはいかない。
 フェイトは、先に帰る旨だけメールで伝えて帰ろうと、ポケットから携帯電話を取り出す。
 すると、見計らったかのようなタイミングでメールの着信が来た。
 フェイトは、その送信者を見て驚いた…………その送信者は、今職員室にいるはずのはやてからだった。
 基本的に優等生で通しているはやては、職員室はもちろん学校内で携帯電話を触ることは無かった。それだけに、この状態は何らかの異常事態が発生しているようにしか思えず、フェイトは背筋を嫌な汗が流れるのを感じた。
 それでも、意を決して震える指でそのメールを開く。
 
『彼女は預かった。返して欲しければ、海鳴港の第三倉庫に一人で来い』
 
 メールには、明らかに罠であることが分かる本文と、ご丁寧に写真が添付されていた。
 
「なっ!!??」
 
 恐る恐る開いた写真を見て、フェイトは衝撃のあまりしばらく硬直してしまった。
 そこには、腰の周りをロープでグルグル巻きに縛られたはやての姿が写されていた。更によく見ると口にも白い布を巻きつけられているようだった。
 気を失い、ぐったりと壁に背中を預けてうな垂れているはやての姿を見て、フェイトは生まれて初めて殺意を覚えた。
 
 ────犯人の目星は付いている。
 
 フェイトは、荷物も持たずそのメールに記された場所を確認すると教室を飛び出す。
 学校を出たフェイトは、犯人であろう人物の顔を思い浮かべながら、湧き上がる怒りに身を任せて全力で走るのだった。
 
      ◇
 
「須狩ぃぃぃ────!!」
 
 指定された倉庫、その扉を力任せに開け、誰がいるかも確認せずにフェイトはその名を叫ぶ。犯人など最初から分かっている。
 その倉庫はかなり薄暗く、陽の光がほとんど入ってきていないようだった。
 フェイトは慎重に中に入ると、全神経を研ぎ澄ませてゆっくりと前へ進む。相手が相手だけに、突然背後から襲われる可能性が頭を過る。
 
 ────落ち着け!
 
 フェイトは、胸に滾る怒りを落ち着かせるように神経を集中させていく。そして、いつ襲われるか分からない中を一歩、また一歩と慎重な足取りで前へと進む。
 
「はやて!!」
 
 ある程度進み、目もようやく慣れてきた頃にフェイトは倉庫の壁に横たわるはやての姿を見つけた。はやては、どうやら気を失っているようだ。
 急いで助けたい一心で、フェイトがはやての元へと駆け寄ろうとした、その時。
 
「ようこそ、我がアジトへ!!」
 
 パッと照明が点くと、はやての隣で須狩が両手を大きく掲げて歓迎のポーズをしていた。いつもの白衣姿に、趣味の悪い手袋をしている。いつも部屋に引きこもっているためか、肌は不健康な白さを保ち、目の下には深いクマがある。
 
「須狩…………」
 
 フェイトは、目の前が真っ赤になりそうな程睨みつけて、怒りを込めてその名を呼ぶ。
 
「おやおや、そんな殺人鬼みたいな目で睨まないで欲しいな」
 
「こんな事までしておいて、よくそんな事が言えるものだ……」
 
「私はただ、君が来やすいようにと思って、そのお膳立てをしただけに過ぎないのだよ……それをこの言いよう……ちょっと傷つくなぁ……」
 
 須狩は、本当に困ったという様子で肩をすくめる。その姿を見たフェイトは、髪の毛が逆立ちそうな程の怒りを覚えた。
 
「す、か、りぃぃぃぃ!!!!!」
 
 フェイトはその怒りのまま、突っ込もうと腰を沈める。すると、まるで見計らったようなタイミングでパチンと須狩が指を鳴らした。その音に反応するように、ぞろぞろと屈強そうな男共が集まってくる。
 
「ククク……人質を盾にしても良いのだが、まぁその必要もないと思ってね、そもそも君は、この間もボロボロにしてあげたばかりだしね」
 
 クククと心の底から楽しんでいると言わんばかりの厭味な笑い声が人壁の奥から聞こえてくる。今のフェイトには、笑い声はもちろん奴の声そのものが不愉快だった。
 フェイトは拳をぎゅっと握り、奴の笑い声をひん曲げてやろうと心に誓う。
 
「金色の悪魔も今日で終わりかと思うと少し寂しくなるな…………さぁ、お前たち! フェーズ2だ!!」
 
 須狩の号令に、男共はフェイトをぐるりと取り囲むような陣形を取り、全員ボクサーのように腕で顔をガードする。それは、以前フェイトが地べたを這いつくばる事になった須狩の戦略だった。スピードが武器のフェイトの行動範囲を狭め、相手の攻撃を避けられなくなった所を掴まえるのだ。パワーファイターなら問題ないが、正確に相手の急所を突くことで敵を無力化するフェイトのようなタイプには、この戦略はかなり効果的だった。
 以前は、なのは先生に窮地を助けてもらったが、今回はその助けを期待できそうにはない。もとより助けを求めるつもりもフェイトには無かった。
 
「さぁ、諸君! 彼女に今までの雪辱をぶつけるがいい!!!」
 
「おおおおおおおお!!!!!」
 
 須狩の号令に呼応するように、男共の地面を揺らすような声が倉庫中に鳴り響く。そして、示し合わせたように男共の突進が始まった────────。
 
       ◇
 
「…………ん」
 
 ビリビリと地面を震わせる大きな音に、はやては意識を取り戻す。
 少し寝ぼけた頭で目を開けると、大勢の男達が何かに向かって叫んでいて、事態の異常性に、はやては一気に目が覚めた。
 腕も口も縛られていて、体の自由の一切を奪われている事に気づいたはやては、壁を上手く使って体を起こす。そして、そこから見える光景にはやての思考は固まってしまった。
 大勢の男達に取り囲まれた中心に、見知った一人の綺麗な少女が立っている。その光景は、まるで公開処刑のようだった。
 
「ん────!! ん─────!!!!」
 
 はやては、その女の子に向かって目一杯の力で叫ぶ。しかし、口を布で縛られている上に、男共の叫び声の前では、いくら叫んでもその少女にまで声が届くことは無かった。
 それでもはやては叫び続けた────自分の事など放っておいて逃げて欲しい、と。
 
 そんなはやての願いとは裏腹に、その少女はファイティングポーズを取る、と同時に大勢の男の一人が凄まじいスピードで彼女に突進してきた。
 そのあまりのスピードに、はやては嫌な未来が一瞬脳内を過る。怖くなったはやては、さらに声を張り上げようと縛られた口で懸命に叫んだ────────。
 
       ◇
 
 周囲をぐるっと取り囲まれて、以前突破できなかった戦略を取られていたフェイトだが、頭は妙に冴えわたっていた。怒りの炎は絶えずその身を焦がしつつも、頭はすっきりしていてよく周りが見える。
 フェイトがファイティングポーズをとると、それに引っ張られる形で、フェイトの背後にいる男が突進してきた。
 中々大したスピードだが、フェイトには敵の攻撃がちゃんと見えていた。ひらりといつもの様に軽々と躱す。──ただ、躱すだけ……いつものように。
 しかし、その様子を見た男共は、安心したように口が大きく歪んだ。おそらく、前回と同じ未来が待っていると確信したのだろう。粘着質のあるどす黒い欲望が周囲を覆い始める。
 
 ニタニタと口を歪めた男達は、その表情のままフェイトへ再び突撃を開始する──そこで、フェイトの怒りは頂点に達した。
 
 次の瞬間、ドゴォという大きな音に、周囲は静まり返ってしまった。目の前には、先程突撃した男が床に突っ伏していた。ピクリとも動かない様子に、先程までの空気が一転して張り詰めたものに変わる。
 
「……さぁ、次にこうなりた奴は誰だ」
 
 何が起こったのか分からない男共は、反撃を恐れてじりじりとフェイトとの距離を開けて行く。
 
「ほぉ……面白い」
 
 しかし、須狩の反応は落ち着いたものだった。ある程度、予想していたのかもしれない。
 
「なに諸君、心配することはない……あんな攻撃、そうそう上手く行くものじゃない。彼女は相手の突進を躱すと同時に、その後頭部へ肘打ちを喰らわせてきたのだ……だが、余程相手の突進スピードが遅くないと決まりはしないよ…………それよりも、」
 
 丁寧な現状説明。やはり須狩にはフェイトの動きは見えていたようだ。ニタリと大きく口を歪ませて、片頬を吊り上げて気持ちの悪い笑みを浮かべると、
 
「足を止めてしまうほうが、君たちにとって余程危険だよ」
 
 それはまるで脅迫にも似た言葉だった。
 それを聞いた男共は、まるで奴隷のように恐怖をその瞳に宿らせて突撃を再開してきた。
 
「……私の、大切な友人を、こんな目に合わせたのだ…………その埋め合わせは、きっちりしてもらう!!!!」
 
 恐怖を宿した敵の表情を見ても、フェイトは容赦する気にはなれなかった。
 先程の男よりも突進してくるスピードは速かったが、難なくその攻撃を躱すと、腰を捻るように体を回転させて、相手には見えない程のスピードで、その肘を男の後頭部へと叩き付ける。
 そのスピードは、確かに今までのフェイトでは為し得なかった速さだった。
 きっかけは、おそらくなのは先生。しっかりと足を踏ん張りを利かせた彼女のとてつもなく重い攻撃に、フェイトは力を込める要訣を見た気がした。
 力を込めるのは、ほんの一瞬──インパクトの瞬間のみ。
 それが、フェイトのスピードをさらに高めることにつながっていた。
 
 気づけば、あれほど苦戦した戦略に、フェイトはものの五分で片を付けていた。男共が床に這いつくばってうめき声を上げている。その中心に立っているのはフェイトだけで、その光景はまるで地獄絵図のようだった。
 
「ん────!!」
 
 そこでようやく、はやての声がフェイトに届いた。
 声の方を振り向くと、ボロボロと涙を流しながら懸命に叫ぼうとしているはやての姿が目に入った。その姿に彼女がいかに自分を心配してくれているのかが伝わってくる。
 
「大丈夫だよ、はやて……すぐ助けるから待っててね」
 
 そんな彼女にフェイトは優しく声をかける。
 その声に気づいて、はやてはびくっと肩を震わせて恐る恐る顔を上げる。フェイトが無事であることを確認して、はやての瞳からははらはらと、さらに大量の涙が流れ始めた。
 
「ククク……もう勝ったつもりかい?」
 
「……手下を使って、ナンバー2まで上り詰めてきただけの奴に、今更何かできるの?」
 
 相手の安い挑発に、フェイトは敢えて乗っかる。そのままこちらへ突撃でもしてくれれば早く片がつく。
 しかし、須狩は手下を全員やられたというのにも関わらず、随分と落ち着いていた。前回はなのは先生にビビッてすぐに逃げだしたというのに。
 
「ククククク……これは見くびられたものだ……まさか私がそんな手でナンバー2になったとでも?」
 
「……違うの?」
 
「ククク……君は挑発が上手いねぇ。そうやって私をこの友人から遠ざけたいわけだ」
 
 そう言って、須狩ははやてへ近づく。
 はやてもそれに気づいて、表情が恐怖で強張る。
 
「やめろ!!!」
 
 須狩の手がはやてに伸びてきて、フェイトは思わず叫んだ。
 フェイトの叫び声に一度その手を止めた須狩は、フェイトを品定めするように一瞥すると再びその手をはやてへ伸ばす。
 何をしようとしているのか読めないフェイトは、迂闊に動くことができず、須狩を睨みつけることしかできない。
 須狩の手がはやての後頭部の辺りまで伸び、ごそごそとその手が動くと、はらりとはやての口を縛っていた布を解く。解放でもする気になったのかとも思ったが、そういう訳ではないようだ。
 
「ククク、そこで悲痛な叫び声を上げたまえ。この金色の悪魔がズタボロにされる様を見ながらね……ククク」
 
 須狩はそう言うと、はやての唇を指でツッとゆっくりとなぞる。その光景を見たフェイトは全身の血管から憎悪が全身に流れ、髪が逆立つような感覚を覚えた。
 須狩はそんなフェイトの様子すらも愉しい余興と言わんばかりに、気持ちの悪い笑みを浮かべたまま、こちらへ歩いてくる。
 
「……須狩、貴様だけは、許さない…………」
 
 フェイトは憤怒の声を漏らすと、一気に須狩との距離を詰める。 
 一瞬で決める! フェイトは相手の顔面目掛けて、渾身の力を込めて足を蹴りあげた。
 
 しかし、フェイトの蹴りは須狩の顔の遥か上を虚しく横切る。そしてそのままバランスを崩して床に尻餅をついてしまった。
 まるで床が滑ったような違和感を覚え、フェイトは慌てて立ち上がって須狩と距離を取る。ぐっと踏ん張って床の感触を確かめる。床からはいつもと同じ反動が返ってきた。
 
「……どうかしたのかね? まるで狐につままれたような顔をしているが?」
 
 須狩の質問に、フェイトは何も答えられなかった。
 奴に何かをされたことは明白だが、それが何か検討がつかず、フェイトは無言のままじっと相手を観察する。いつもと同じ白衣姿、今日は趣味の悪い手袋をしている、特に変なものは無いように見える。
 
「フフフ……困っているようだね、どれ、ではこちらから行くとしよう」
 
 そう言いうと、須狩は腕を大きく横に振る。何をしているか分からないフェイトだったが、突然、腕に激痛が走った。
 
「────くっ!?」
 
 何が起こったかも分からないまま、フェイトが腕を見るとまるでナイフに切り付けられたように制服が裂け、その隙間から覗く皮膚からは血が流れていた。
 
 ────さらに上から下にもう一閃。
 
 振り下ろされた腕に追従するように、フェイトの腿を上下に切り裂く。
 あまりの衝撃に、フェイトは膝をついた。
 
「フェイトちゃん!!」
 
 はやての悲痛な叫び声がこだまする。その声に須狩は両手で自分の肩を掴むと、身を悶えさせる。
 
「ん~……いいねぇ……ゾクゾクする!! …………もっと聞かせてくれ」
 
「…………ひっ」
 
 はやては、須狩のウェスパー声に怯えた声を漏らす。
 
「はやて、大丈夫だよ……すぐ、助けるから」
 
「フェイトちゃん!!」
 
 フェイトはその間に体勢を立て直していた。そして、冷静に先程の二撃を分析する。
 原理は分からないが、相手は遠隔からこちらを攻撃できるようだ。しかし、だからと言って手が無いわけではない。
 
「ククク……いいねぇ、いいねぇ……そら、もっと踊りたまえ!!!」
 
 再び須狩が腕を横に薙ぎる。フェイトはそれを躱すように身を屈めた。
 
「────ほう」
 
「フン、私にそう何度も同じ攻撃は効きはしない!」
 
 今度は自分の身に何も起こらなかった事を確認して、フェイトは須狩を睨みつける。須狩は少し驚いたようだったが、想定の範囲内だったのか、あまり様子は変わらない。
 
 すると今度は縦横無尽に腕を振り始めた。
 しかし、スピードには自信があるフェイトにとって、須狩の動きは遅かった。どんなに腕を振られようとも、上手くその延長線上から逃げながら、距離を詰めて行く。
 
「これで────終わりだ!!」
 
 ほぼゼロ距離まで詰めたフェイトは、須狩の攻撃の間隙を縫って拳を振り上げる。
 
 ──いける!
 
 フェイトは今までの怒りすべてを込めて相手の顔目掛けて腕を振った。
 
 
     ◇◆◇
 
「────な!?」
 
 しかし、自分の拳が須狩に当たる手前で、フェイトの拳は”何か”に止められてしまった。同時に、拳に激痛が走る。
 
「……これは……糸?」
 
「ククク……ご明察」
 
 須狩はぎろりと眼球だけを動かして、フェイトの方を見るとニタニタとした笑みを浮かべる。
 
「私の七つ道具の一つ、鉄鋼線。触れるだけで皮膚を切る事ができる特注のワイヤーさ」
 
(そう言えば聞いたことがある。須狩は体中に色々な武器を仕込んでいる、と)
 
 フェイトは、須狩の言葉を聞きながら自分の軽率な行動を悔やんだ。だが、ネタが分かれば大したことは無い、とフェイトは再び須狩を睨みつけると、拳を再び振り上げる。
 しかし、須狩も第二撃は許さなかった。牽制のために腕を振りながら、フェイトから距離をとる。フェイトはすぐに、須狩との距離を詰めようと、須狩が辿る道筋と全く同じコースをトレースする。
 相手の武器がワイヤーである以上、別のルートから接近すれば先程と同じように予め張られているワイヤーの餌食になるとフェイトは素早く考える。同時に、攻略法もその頭に思い描く。
 
(打撃系が危ないなら、ゼロ距離まで近づいて投げ技にすれば……!!)
 
 スピードに関して、フェイトに勝る者はそうそう居ない。罠に引っかからないように、慎重に相手の攻撃を躱しながらでも、フェイトは徐々に須狩との距離を詰めて行くことができた。
 
「追い詰めたぞ、須狩!!」
 
 グッと須狩の胸ぐらを掴むと、フェイトは勝利を確信して叫ぶ。
 相手の右手も掴むと、グイッとそのまま引き寄せ、須狩を背負うようにフェイトは体を回転させる。
 
「ククク……本当に、君は単純で助かるよ」
 
 投げる瞬間、ぼそりと呟かれた言葉。ゾワッと背筋が凍って、危険信号が脳内で鳴り響き始める。
 と言っても、もう背負い投げの初動に入っている。ここから逃げることなどできるはずがない、とフェイトはこの技に全霊をかけた。
 そのまま相手を叩き付ける────────はずだった。
 
 須狩を背負った所で、なぜかピクリとも動かない体に、フェイトは全身が凍るような悪寒に襲われた。
 
「ククク……真っ直ぐで、お上品……君の戦いは、本当に素直で助かるよ」
 
 須狩は、硬直して動けないフェイトの腕からスルリと抜けると、コツコツと足を鳴らして愉しむようにフェイトの正面へ回り込む。
 
「フェイトちゃん!?」
 
 奥から、フェイトの異変に気付いたはやての叫び声が聞こえる。
 
「くっ……一体何を……」
 
「よぉ~く、自分の体を見給え」
 
 片方の目だけを異様に大きく開きならが言われた須狩の言葉で、フェイトは何かに気づいたように自分の体を注意深く見ると、キラキラと僅かに輝く細い糸が腕と胴に巻きつかれていた。
 
「一体、いつの間に…………」
 
 フェイトは、全身に巻きつかれている糸を見て驚愕する。糸には細心の注意を払っていたはずだ……にも関わらず、一体いつ捕まってしまったのか、フェイトには見当もつかなかった。
 
「クククククク……その顔は、本当に何も気づいていないようだな。簡単さ、胸ぐらを掴まれた瞬間だよ」
 
「な!?」
 
「簡単さ、最初から投げ技で来ると分かっていたからね。相手の攻撃が分かっているのだから、あらかじめ糸を用意して、そこに誘導するだけで良かったのさ……本当に、とんだマヌケだよ……ククク」
 
 そう語る須狩の瞳は、オモチャで遊ぶ少年の様だった。
 奴にとってはただの遊びだと言うのか……フェイトは再び沸々と怒りが込み上げてきた。
 
「フェイトちゃん! フェイトちゃん!! 逃げて!!!!」
 
 遠くから、はやての叫び声が聞こえる。
 
(ただの遊びで、彼女をあんな目に遭わせたというのか……)
 
 フェイトは、巻き付いている糸を力任せに振りほどこうとする。糸が食い込み腕と胴から血が流れ始めるが、怒りのあまり痛みなど感じはしなかった。
 
「おお、怖い怖い……しかしその糸は、今の君程度の力では、決して解けはしない」
 
 フェイトは須狩の言葉を無視して、力を入れ続ける。
 ズズっと離れた場所から何かが動いた音がした。糸を止めている支点が動いているのだと、フェイトは直感的に気づいて、さらに全身に力を込める。
 
「うおぉぉぉぉ!!」
 
「ふぅ……やれやれ」
 
 しかし、須狩の声は冷ややかだった。そこに焦りは微塵も感じられなかった。
 
「あまり暴れられてもこの後困るからね、どれ大人しくしてもらおうか……」
 
「フェイトちゃん、フェイトちゃん!!」
 
「んん~~……良い音色だ……どれ、ではどこにしようか……顔か……それとも、腕か」
 
 須狩は、昆虫観察でもしているかのように、フェイトの部位を観察しながらブツブツと呟く。その目は完全に、フェイトを人として認識していないような冷酷なものだった。
 
 思案が終わった須狩は何かに納得したように、腕を大きく上へ掲げる。
 
「よし、腕にしよう」
 
「やめてぇ──────────────────────────────!!!」
 
 はやての悲痛な叫び声が倉庫をこだまする中、須狩はその腕を振り下ろした。
 
 
(つづく)
 
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Author:タイヤキ
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