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【やさしい教師のいじめかた4】

どうも、SS担当タイヤキです。
遅くなりましたが、2015年初投稿です(本当に遅い)。
これアップしたら、3月、4月に立て続けにあるイベントに向けて頑張ります~(白目)

あ! そうそう、ふたりはプリキュアSplash☆Starの漫画!!
ふたご神の漫画、Getしましたよ~~!!!
も~~~!! 咲舞可愛すぎるんじゃ~~~(ビタンビタン
特に舞の可愛さと、咲の男前っぷりは異常\(^0^)/ 百合好きも咲ファンも舞ファンも買うべき!!(突然のステア)

……気を取り直して、とりあえず、なのは先生と学生フェイトのお話もその4まで来ました。
今回はなのは先生頑張ります!! ただ、戦闘ばっかだから、百合分は少ないです~~(涙

今までのお話→(その1)/(その2)/(その3

以下からどうぞ(※百合注意)
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【やさしい教師のいじめかた4】
 
     ◇◆◇
 
 振り上げられた右腕。その指先にはきらりと光るものが見える。
 
 ────鉄鋼線
 
 目の前の男は、その指に掛かる糸をそう呼んでいた。
 正直、名前などどうでもいい。しかし、その糸の威力は想像以上で、人の皮膚など簡単に切り裂いてしまう。今、その糸が自分の腕を切断しようと鈍く輝いていた。
 しかし、フェイトは糸に全身を縛られて身動きを取る事もできず、ただ振り上げられた腕を見上げているだけ。
 いつのまにか倉庫には照明が灯されていて、その男の背中を照らしている。逆光となった照明はその男の表情を暗闇に閉ざすも、ギラリと彼の瞳だけはガラス玉のように光って見えた。
 
 ──まるで、機械だ
 
 表情の見えない須狩が、まるで人の感情が消えてしまったロボットのように見えた。無感情で無機質……ただ命令された事を忠実にこなすだけの機械。
 こんな状況の中でもまだフェイトはどこか心に余裕があった。それは、ただの楽観主義者なのか、単なる自暴自棄なのか、フェイト自身にすらそれは分からなかった。ただ、何となく、またあの先生が助けて来てくれるのではないか、というささやかな希望が心の奥底で小さく光っていることだけは分かった。
 
「……随分と呑気に構えているようだが…………まぁ、いいさ」
 
 右腕を上げていた須狩は、そう呟くと小さく息を吐く。
 次の瞬間、ギラリと瞳をさらに強く光らせた。
 
(ああ………………………………………………終わった)
 
 その光を見た時、フェイトは全てを悟った、結局自分はドラマの主人公などではないのだと。フェイトはどうにもならない現実から目を逸らすように、ぎゅっと強く目を閉じた。
 
 遠くで、はやての悲鳴がこだましていた────。
 
      ◇
 
「ぐっ……」
 
 強い衝撃を正面から受け、フェイトは全身を硬直させた。
 しかし、体を襲ったのは激しい腕の痛みではなく、柔らかく包み込まれるような優しい感覚だった。その後に鼻腔をくすぐるシャンプーの匂いが、フェイトを少しだけ安心させた。この匂いにはセラピー効果でもあるのだろうか、そんなくだらない考えがフェイトの頭を過る。
 自分の腕がまだ繋がっている事を確かめて、フェイトはゆっくりと目を開ける。その瞳がとらえたのはドアップの大好きな先生の顔。その距離感にフェイトの心臓は飛び跳ねる。
 
「…………先生」
 
 フェイトの口からは、先生を呼ぶ声と安堵のため息が零れる。
 
「もう、大丈夫だよ──フェイトちゃん」
 
 優しく名前を呼ぶその声は、フェイトの体から不安を押し出していく。一緒に涙まで押し出されそうになるが、そこはグッと堪えた。
 
「先生…………はやてが……」
 
「うん、分かってる──あとは、先生にまっかせなさい♪」
 
 そういって笑顔を見せるなのはに、フェイトはとうとう泣き出してしまう。
 この涙は安堵の涙なのか、それとも何もできなかった自分への悔し涙なのか、色々な感情でぐちゃぐちゃになったフェイトには自分の流す涙の理由なんて分かりそうもなかった。
 そんなフェイトをあやすように、なのははぽんぽんと軽くフェイトの頭を叩いた後、立ち上がって須狩を睨みつけた。
 
「フフ……ようやくお出まし、か……随分と遅い登場で……ククク」
 
 須狩はまるでなのはが助けに来ることが最初から分かっていたかのような物言いで声をかける。気味の悪い笑みは崩れることなく、どこか飄々としている。
 
「それにしても……そんな傷で、本当に大丈夫なのかね?」
 
 須狩はにぃっと大きく口を歪ませる。フェイトはその言葉の意味をすぐに理解できなかった。─────目の前に滴る血をみるまで。
 
「先生!? その傷……もしかして……」
 
 その血を辿るように見上げると、大きく切り裂かれた背中と、そこから大量の血を流しているなのはの姿が瞳に映る。
 
「……にゃはは、ちょっと格好つけすぎて、失敗しちゃった」
 
 後ろを振り向いてぺろりと舌を出すなのはの声が、あまりにも普段と同じトーンで、フェイトは絶句してしまう。本人には擦り傷程度だとでも言うのだろうか、そんな考えすら頭を過る。
 しかし、流れ続ける血を見て、そんなはずはないと我に返る。
 
「……先生…………ごめんなさい、私……」
 
 謝罪した所で何か変わるわけではない、そう分かっていてもフェイトは謝罪せずには居られなかった。今は、ただただ自分の無力さが悔しい。
 そんなフェイトの謝罪を、なのははくすりと笑って受ける。それは、悪がきが素直に謝った時に見せる慈愛に満ちた先生の顔そのものだった。
 
「大丈夫だよ、フェイトちゃん♪ こう見えて私、結構丈夫だから」
 
 いや、丈夫とかそういうレベルの話じゃ、と思わず突っ込もうとしたフェイトだったが、なのはの見せる柔らかい笑顔に何も言えなくなってしまった。
 
「ククク……丈夫ときたか、面白い……」
 
 横から須狩の突っ込みが飛んでくると、なのはは真剣な眼差しでそちらを睨みつける。
 
「私の可愛い生徒達は返してもらいます」
 
 鈴のように凛と鋭い声、普段では決して聞くことができない声にフェイトはドキリとした。
 
「ククク……はいそうですか、とでも言うと思うか!!??」
 
 その叫び声と同時に須狩はぐわっと右腕を振り上げると、なのは目掛けてその腕を大きく振る。なのははその腕の軌道上から逃れるように身体をひるがえす。
 
「ほう……流石に、もうネタは割れているというわけか……だが!!」
 
 須狩はブンブンと縦横無尽に腕を振り続ける。そのスピードはフェイトの時よりも明らかに速い。
 
「先生!!」
 
 慌てたフェイトが、彼女に声をかける。
 しかし、一方のなのはは当然のようにその全てを躱していた。
 
「君のネタは二つ、一つはその手にしている糸──鉄鋼線。それから、周囲にめぐらされた柔らかい糸────────蚕の糸」
 
 須狩の攻撃を躱しながら、なのはは相手の手の内を暴露した。その言葉に、須狩は少しだけ驚いたようで、「ほう」と呟いて右目を大きく開く。一番驚いていたのはフェイトで、自分を捕らえていた糸と攻撃してきた糸が違うという事実に、口をあんぐりと開けてしまっている。
 
「でも、蚕の糸はさっき殆ど切ったから、もう君を守る壁はないよ」
 
「どうやらそのようだな…………鉄よりも固いと言われる蚕の糸を切断するとは驚きだが……」
 
 須狩がそう言い切る前に、なのはは一気に距離を詰める。
 
「──っふ」
 
 ズンという低く重い踏み込み音と同時に鋭い正拳突きが須狩の胸元目掛けて飛んでいく。目で追いきれない程迅い攻撃────しかし、須狩はそれを躱して見せた。
 あまりの衝撃的なシーンに、フェイトは目を見開く。攻撃を避けられたなのはも驚きのあまり一瞬その動きを止めたが、すぐに体勢を立て直し再び須狩を射程距離内に収める。
 
「はっ!!」
 
 すぐさま第二撃の拳が須狩目掛けて飛んでいく。
 しかし、須狩はそれさえも易々と躱す。まるで、初めからそこにパンチがくる事が分かっていたかのように。
 
「ククク……私としてはもう少し驚いて欲しいのだがね」
 
 次に繰り出される三撃目、さらには四撃目をも躱しながら須狩は気持ちの悪い笑顔で語りかけてくる。
 
「……どういう理屈か知らないけれど、君には私の動きが分かるみたいね」
 
 ようやく手を止めたなのはは、全く動揺した様子もなく、まるで数学の問題を答えるように平然と自身の予測を口にする。その言葉で須狩の方が動揺してしまう。
 
「流石、すぐにそこまで判るとは……………………護衛役は伊達ではないということか」
 
 最後の方は少し声が擦れてしまっていて、須狩が思った以上に動揺している事が窺えた。
 しかし、苦し紛れに呟いたと思われる言葉に、なのはの方も大きく目を見開いて驚いているようだった。
 
「──────なぜ、それを?」
 
「ククク……やはり、そうか」
 
「────────────!!」
 
 須狩の言葉に、なのはは自身が嵌められた事に気づき、表情を曇らせる。
 
「ククク……いくら君の事を探っても尻尾どころか、煙すら見つけられなくてね……それで確信したよ、必ず”何か”あるとね」
 
 須狩は始終変わらないニタついた表情のまま、楽しそうに語り続ける。
 
「けれど苦労したよ、何せ煙さえ見つからないからね…………でも、あの時、彼女を助けに来たのは偶然ではなかったのではという可能性に気づいたのさ。結果は、まぁ…………ビンゴだったわけだが」
 
 須狩の眼がフェイトに向いた瞬間、全身を舐めまわされたような感覚に、フェイトは背筋に悪寒が走る。こんなに不気味に光る眼を向ける人間をフェイトは未だかつて見たことがなかった。
 その視線を遮るように、なのはの掌がフェイトを庇うように伸ばされる。
 
「────君は、知り過ぎた」
 
 その言葉が相手に届く前になのはは動き出していた。
 目にも止まらぬ速さで須狩に接近すると、渾身の力を込めて右拳を繰り出す。しかし、この攻撃も須狩は最初から予測していたかのように、横跳びで避ける。
 
「────ここッ!!」
 
 しかし、須狩が浮いたその瞬間を狙って、なのはは繰り出した拳をそのまま横にスライドさせた。本来の裏拳は体を一回転させるが、なのはのソレはそんな事をしなくても十分な威力があった。
 
「ぐっ!!?」
 
 見事にヒットした拳は、まるでピンポン玉のように須狩を段ボール箱の山まで吹っ飛ばす。ガラガラと崩れる山は、そのまま須狩の体を埋もれさせた。
 
「────やった!」
 
 フェイトは勝利を確信して声を上げ、喜びの表情でなのはを見る。ずっと静観していたはやても同じような事を思ったのだろう、その表情に安堵の色が濃くでている。
 しかし、なのはは険しい顔のまま立っていて、フェイトの表情は固まる。
 
「……先生?」
 
 じっと須狩が吹っ飛んだ段ボール箱の山を睨んでいたなのはに、フェイトは小さく声をかける。ただいつもの優しい笑顔を見たかった、ただそれだけの理由で。
 
 ぽつりと呟いた言葉と同時に、カシュッという小さな音がフェイトの耳に届いた。次の瞬間、ガインという金属同士がぶつかり合う音が壁から聞こえ、そちらに視線を動かすと、長さ10センチはある長針が壁に突き刺さっていた。
 フェイトには全く見えなかったが恐らく須狩が飛ばしたものだろう。そしてなのはにはその針が見えていて、飛ばされてきた針を躱したという事だろう。
 フェイトが状況を頭の中で整理している間にも、カシュッカシュッと小さな音が連続して聞こえてきて、その度に大きな金属音を立てながら針が壁に突き刺さっていく。
 いくら飛ばしても、全て見事に躱していくなのはに、須狩はとうとう諦めたのか、段ボールの山から姿を現す。
 
「おやおや、困った……その傷で、この攻撃をこれほど容易く躱すとはね」
 
「この程度で動きが鈍る程、ヤワじゃないから」
 
「オ~、怖い怖い。強がりではなさそうな所が、なお怖い……」
 
「…………随分と余裕なのね」
 
「ククク」
 
「言っておくけど、さっきの攻撃は君が姿を見せた時点で、もう私には効かないわよ」
 
 なのはの言葉には確かな説得力があったが、それでも須狩の表情は変わることなく、ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべ続けている。
 
「────────シャァ!!」
 
 突然、右腕を思いっきり振り下ろしてくる須狩。
 なのはとの距離は数メートル離れているものの、そんなものは鉄鋼線には関係ない。
 しかし、なのはにとってすでに見慣れてしまった攻撃は、最小限の動きで躱されてしまう。床にピシピシと鋼線が当たる音だけが虚しく響く。
 
「シャッ! シャッ!!」
 
 しかし須狩は懲りずに左手、右手と交互に攻撃を繰り出す。
 何度も繰り返される攻撃の中、須狩が右手を上げる瞬間を見計らってなのはは一気に距離を詰める。その間合いの詰め方は見事なもので、完全に須狩の虚をついていて、バックステップで逃げる事さえできそうになかった。
 須狩は堪らず左手をなのはの前に差し出して、苦し紛れの防御体勢に入った────かに思えた瞬間、バシュという矢を弾いた弦のような音が倉庫に響いた。
 
「しとめたぁッ!!!!! ────────────────なっ!?!?!?」
 
「九宮抽箭……随分と古風な暗器を使うんだね……」
 
「知っていたのか!?」
 
「ええ、最初から気づいてた…………だから言ったでしょ。君の攻撃はもう私には効かないって」
 
 弦の音と共に須狩の手からは先程の長針が放たれる。しかし、ほぼゼロ距離から放たれたそれをなのはは腰を沈めて難なく躱して見せる。
 突然、目の前から姿を消したと思った彼女は、いつの間にか自分の真下にいた。須狩は何とか距離を取ろうと足で地面を蹴る。
 
「────高町流、空木通し(うつおとおし)!!」
 
 そう叫んで繰り出された掌底は、いままでのなのはの攻撃とはけた違いの威力だった。再び段ボール箱まで須狩を吹き飛ばすと、激しい衝撃音が倉庫内に響きわたり、前が見えない程の埃が宙を舞った。
 
「す、すごい……」
 
 喧嘩素人のはやてはもちろん、スピードに自信があるフェイトでさえ今の一瞬に何が起こったのか目で追いかけることが出来ず、ただただ小さく驚きの声を漏らす。
 
「…………クククッ、本当に素晴らしいッ」
 
「な!!??」
 
 埃の舞う中、ガラガラと音を立てながら須狩が段ボールから姿を現す。奴の表情にも口調にもまだまだ余裕が窺える。フェイトは須狩があまりにも平然と立ち上がった事に驚いて声を上げた。
 一方、なのはの表情は、驚きではなく、なぜか少し悲しそうだ。
 
「…………もう、おしまいにしよう?」
 
 なのはがそうポツリと呟くと、バキンという音とともに、須狩の眼鏡が折れて地面に落ちる。同時に、ぐっ!? と須狩が小さく苦痛の混じった声を漏らした。
 
「その眼鏡で私の動きを予測してた事も、すぐに分かったよ……これで君は、もう私の攻撃を躱せない……」
 
「……本当に恐れ入った、ご明察だ……だが!」
 
 須狩は白衣のポケットから何か取り出し、それを床に叩き付けると、ボフンという音と共に白煙がなのは達目がけて迫ってくる。
 
「……毒霧、か」
 
 高町流、旋風斬り、なのははそう呟いてから、ぐっと腰を低くし居合いのような構えを取ると、手刀を鋭く真横に振り抜く。
 なのはの手を避けるように白煙はぱっくりと裂けた後、風に舞うように霧散した。
 
 ──ガチャリ
 
 間髪入れず須狩は小型の拳銃を構えていた。
 躊躇することなく引き金を引く。
 
「────────────────せ、」
 
 ドラマでしか見たことがない黒い物体から、耳をつんざく激しい音が響き、フェイトは発した言葉を言い切る前に、恐怖で耳を塞ぐ。ふと視線をはやての方に動かすと、両手両足を縛られているはやては、背中を丸めて震えていた。
 
「──な、なんだと!!??」
 
 須狩の叫び声に振り向いたフェイトは、驚愕で目を見開いた。
 ガン、ガンと爆発音と共に発砲される拳銃の弾は、しかしなのはに当たる事はなく、虚しく壁や床を打ち付けているだけだった。しかも、なのはは拳銃の弾を避けながら須狩との距離を詰めていて、10メートル程あった二人の距離は、今や2~3メートルぐらいまで縮まっている。
 流石の須狩もこれは想定外だったようで、その表情からはすっかり気味の悪い笑顔は消え、焦りで表情が強張っている。
 
「……これで、終わり!」
 
 繰り出された正拳突きが、須狩の胴体を打ち抜いた。
 派手に吹っ飛ばされたりはしなかったが、スパンという軽快な音に貫かれた須狩は、とうとうその場で倒れた。
 
「……クックック、完敗だよ…………全く、これだからこの世は面白い」
 
 うつ伏せに倒れた須狩は、左目だけをなのはに向けて弱弱しく呟く。ひどく擦れた声だったが、少し離れたフェイトの耳にも彼の声は聞こえてきた。
 
「私も驚いたわ、ただの学生がここまでやるなんてね」
 
「…………フッ、これだけ手を尽くしたというのに、まだこれほどの差があるとは……しかし、一警視総監の娘とはいえ、これだけの護衛を用意するとなると……」
 
「…………彼女は、ただの一生徒だよ」
 
「クック、…………そんな訳あるまい、ただの一生徒にこれほどの護衛がつくはずあるまい…………いくら何でも、その言い訳は、苦しすぎるだろう?」
 
「苦しいも何も、事実だし、私はただの一先生よ…………」
 
 フェイトからは二人の表情は見えなかったが、なのはの声が苦しそうなことはすぐに分かった。一方の須狩は、息も絶え絶えで声は擦れているにも関わらず、なぜか談笑でもしているようにその声は弾んでいる。
 
「フフフ、……ハハハ…………どうやら、彼女にはそれ以上の”何か”が隠されているということか……ククク……」
 
「────あなたが、知る必要のない事よ」
 
 なのはの声は、今まで聞いたどの声よりも冷たくて、須狩に掛けられた言葉にも関わらず、フェイトは恐怖で背筋が凍ってしまった。
 
「私は、科学者だ……真実の探求者である私を、……止める事など、…………誰にもできはしない!!!」
 
 須狩の叫び声と同時に、四方から光の束がなのはを目掛けて飛んできた。一点に集約された光は、太陽のように強い輝きを放つ。同時に、ジジジという何かを焦がすような音が聞こえた。
 レーザー光線……SF映画でしか見たことがないし、実在しているなんて聞いたこともないその光線は、しかし無常にもなのはの居た場所に集約され、大きな光の玉となっている。信じられない光景に、フェイトは必死に彼女を呼ぶ。
 
「先生! 先生!!! ──────せんせぇ~~~!!!」
 
「……大丈夫だよ、フェイトちゃん。 私はここにいるよ」
 
 フェイトの不安を払拭するように、いつもの優しい声が、フェイトの背後から聞こえきた。フェイトは長い髪を振り乱しながらバッと後ろを振り向く。
 そこには、少し眉根を下げたなのはの姿があった。どうやらレーザ攻撃は躱しきっていたようで、スーツが少し汚れているだけで、特に目立った外傷はなかった。
 
「……ククク……………………………………化け物め」
 
 顔を上げ、その様子を確認した須狩は、それだけ口にしてバタリと力尽きてしまった。
 なのはは徐にケータイ電話を取り出すと、彼の側まで歩きながら何かをブツブツと話始めた。その声のあまりの小ささに、フェイトにはなのはが何を言っているのか聞き取ることが出来なかったが、何となく予想はできた。
 
「……さ、はやてちゃんの縄を解いたら、一緒に帰りましょう」
 
 電話の相手との話が終わったのだろう、なのははパタンとケータイを閉じて、フェイトの方に一旦向き直ってから、はやての方へと歩を進める。
 はやては、どうやら気を失っているらしかった。小さな体を目一杯丸めて、横になっているその姿は、護りたくなるほど儚い。本来ならばこんな事に縁なんてないはずの子なのだ。むしろ、悲鳴も上げず、恐怖に耐えていたのだ、この小さな体で。
 なのはは、はやての側に寄ると、その手足に縛り付けられている縄をゆっくりと外しにかかる。はやてを起こさないようにという配慮だろうか、その手つきはとても丁寧だった。
 
      ◇
 
 激しい戦いが終わり、平穏な生活へ戻っていく……そんな空気が倉庫の中を満たしていく。
 しかし、フェイトの心の中は、いくつもの疑念で一杯だった。
 
「ねぇ、……私の護衛役って本当?」
 
「……そんな訳ないじゃない、私はただの教育実習生だもん」
 
 堪え切れずに聞いた言葉は、軽く笑顔で返されてしまった。なのはの言葉には何の重さもなくて、まるでおもちゃの人形のように決められたセリフをしゃべっているだけにしか聞こえない。
 
「…………嘘、」
 
「嘘じゃないよ……」
 
「嘘……だって、不自然じゃない、こんな薄暗い倉庫に、都合よく助けてくるなんて、どう考えたって変だよ!」
 
 空気を切り裂くようなフェイトの悲痛な叫びが倉庫の中をこだまする。
 自分の出生を知られていた事より、ずっと信じていた先生が、実は自分の護衛だったという事にフェイトはひどくショックを受けた。
 
 ──────あの出会いが、偶然ではなかったなんて。
 
「……たまたま、教室に行ったらクラスの子が教えてくれたの。フェイトちゃんが血相を変えて教室を出て行ったって、それで私、嫌な予感がして探してたの……」
 
 なのはの少し震える声は、フェイトには届かなかった。なのはの言葉を聞いても、ただ俯いているだけで、ピクリとも動こうとはしない。
 今のフェイトには、どんな言葉も意味はなく、ただ耳に入っては金管楽器のように鳴っては泡のように消えて行く。
 
「もういいよ、大人の嘘なんて、聞きたくもない……」
 
 フェイトはそう呟くと、立ち上がって一気に駆け抜けて行った。
 
「待って! フェイトちゃん!!」
 
 なのはは慌てて声をかけるけれど、その声が彼女の背中を掴まえることはなく、彼女が過ぎ去った場所で、ただ虚しくこだましていた
 
(つづく)
 
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テーマ : 魔法少女リリカルなのは
ジャンル : アニメ・コミック

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タイヤキ

Author:タイヤキ
サークル「前に詰めて下さい」のページです。
『魔法少女リリカルなのは』と『プリキュア』ネタが多いです。

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タイヤキ:SS担当
こじょ :表紙・挿絵担当
てんぷら:ドット絵、その他

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