【リリマジ20】新刊サンプル【な18】
どうも、SS担当タイヤキです。
来週行われるリリマジ20に向けて、新刊無事入稿できましたのでサンプルをアップします!
イベント続きだったので、かなりギリギリでしたが何とかものになって良かったです\(^0^)/
内容はいつも通りなのフェイです♪
大人なのフェイはヴィヴィオそっちのけでイチャイチャしてます(ヲイ
では、以下からどうぞ(※百合注意)
あ、あと表紙サンプルもあります

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【貴女に贈るリンドウの花】
◆◇◆
――――離れ離れでも、きっと同じ夢、見れているよね?
◇
なのはは管理局の大きな窓から外を眺めていた。次元管理局の本局は、次元空間に漂う巨大な人工島で、そこから外を眺めるといくつもの星々や銀河が鮮やかに輝いているのが見える。 本局に勤めるようになった当初こそ新鮮だった光景は、いまではすっかり見慣れた景色になっていた。
なのはは窓ガラスを人差し指で撫でると、遠い次元世界へ向かった友人のことを想い浮かべる。鮮やかに輝く金髪をなびかせて、いつも楽しそうに笑う彼女を想う度、なのはは胸が苦しくなった。それでも想わずにはいられないこの気持ちは一体何なのか……。
もうどのぐらい会っていないだろうか、最後にあった日のことをなのははぼんやりと思い出す。
◇
夏の厳しい日差しもようやく翳りを見せ始め、木々も少しずつその色を変え始めた頃。なのはとフェイトは久しぶりに一緒に帰宅していた。今日はこのままなのはの家に行き、時間の許す限りのんびりとおしゃべりをする予定だった。
「なのは、最近、管理局の仕事の方はどう?」
「うん、最近できることが増えてきて楽しいよ♪」
そう答えるなのはは、ツインテールを卒業し、ポニーテールに髪型を変えたばかりということもあって、少し大人びて見える。
「そっか、でもなのははすぐ無茶するから、ちょっと心配……無理してない?」
「にゃはは、も~フェイトちゃんは心配性だなぁ~、全然大丈夫だよ♪ それよりも、私はフェイトちゃんの方が心配、そっちこそ無理してない?」
「うん、無理なんか全然してないよ」
嬉しそうに目を細めてフェイトがそう言うと、なのははジッとその瞳を覗き込む。嘘をついていないかどうかチェックをしているのだと、以前なのはが言っていた。
嘘をついているつもりはなくても、ぐっと互いの顔の距離が近づくため、フェイトはいつもドギマギしてしまい、いつも目を逸らしそうになる。けれどフェイトは、なのはを近くに感じられるこのやり取りが好きだった。
今回も、逸る鼓動を耳の奥で感じながら、じっとなのはを見つめ返していた。黒目がちな彼女の瞳は、空を思わせる透明感を持っていて、見つめていると吸い込まれそうになる。
ひとしきりチェックをして満足したのか、なのはは再び笑顔になると、くるっと体を翻してフェイトの横に並ぶ。
「フェイトちゃんも無茶しないでね?」
「……うん」
肩を並べて歩きながら短い受け答えをする。お仕事の話はそこで打ち切りとなった。
なのはの家に着くと、二人の話は色々な方向へと拡散していった。アリサやすずか、はやて達との間でこんな話があったとか、近所にできたカフェのスイーツが美味しかったとか、リンディ母さんがますます日本文化にどっぷりで困っているとか……。
そして最後には将来の話になって、これから先、はやてとなのはとフェイトの三人で色々な事を守れるようになりたいね、と言って二人で笑い合ったのだった。
◇
あれから三週間。
フェイトは長期任務で管理外世界へ行っていて、通信も通らない僻地のため、暫らくの間、フェイトの顔すら見ていない。フェイトの長期の任務も、その間顔を見ることが出来ない事も別に珍しい事ではない。それでもなのはは、これらの事にいつまで経っても慣れそうになかった。
昨日より今日、今日より明日。日に日に強くなっていく胸の痛みにいつか耐えられなくなるのではないかと、なのはは最近よく思う。痛みに耐えられなくなったときに一体自分はどうなってしまうのか、それを考えると怖くなった。
「なのはちゃん!」
突然背後から声をかけられて、なのはの肩がビクッと跳ねた。振り向くとそこには親友のはやてが立っていた。
「はやてちゃん……珍しいね、今日は本局なんだ」
「まあ、ちょっとクロノ君に呼ばれてもうてな」
そう言って苦笑いを浮かべるはやては、「それよりも、ずっと外見とったみたいやけど、どうしたん?」と軽い口調で尋ねてきた。あまり見られたくない所を見られてしまったと、なのはは内心、苦い顔になる。
はやてに気取られないように表面上は無表情を装い、「別にちょっと外を眺めていただけ」と素っ気なく答えた。
「そっか、なのはちゃんも最近忙しいみたいやし、あんまり無茶せんほうがええよ」
はやてはなのはの言葉を疑う様子もなく、そう付け加えると「じゃあ、ウチは呼ばれとるから」と言って、軽く手を振ってその場を後にした。
はやての後ろ姿を眺めながら、なのはは罪悪感で針で刺されたような胸の痛みを覚えていた。
(中略)
独りきりの帰り道。
すこし肌寒い初秋の夜風がさらりとなのはの頬を撫でた。
歩きなれた下校道で、無意識の内にその歩調は遅くなる。フェイトと並んで歩く時のスピードがすっかり身体に染みついていることに気付いて、なのはの気分はますます暗くなった。どんなに歩調を合わせた所で、なのはの隣にフェイトの姿が現れる事はない、その事実だけがなのはの心に降り積もってゆく。
「……やっぱり寂しいよ、フェイトちゃん…………」
吐息と共に零れた言葉は、紛れもないなのはの本心。けれど、その言葉を伝えたい人は今この場には居ない。そんななのはの小さな呟きは、街の喧騒の中に溶けて無くなってしまった。
ワイワイと楽しそうに話をしながらすれ違って行く学生たちを横目で見る度に、なのはの心はヤスリのようなもので擦り削られていく。
――――ガリガリ、ガリガリ
耳の奥で心が削られていく音が聞こえる。その度に瞼の裏に金色の髪をなびかせて微笑むフェイトの姿が映った。まるで、その光景だけがなのはの心を正気に保っているかのように……。
なのはの記憶の中でもしかしたら美化されているのかもしれない、それでも瞼の裏に映るフェイトは本当に嬉しそうに笑っていた。それが、なのはには嬉しかった。
不意に目頭が熱くなって、視界が歪んだ。
自分の瞳に涙が溜まり始めたことに気付いて、なのはは慌てて空を見上げる。よく晴れた夜空だったが、煌々と光る街灯に遮られて星はほとんど見えなかった。
――――これじゃ曇っているのと一緒だよね。
夜空を見上げながら、なのはは管理局へ勤めていてもフェイトの姿を見ることができない自分自身の境遇と重ねていた。星を見たいなら街灯の光が届かない距離まで星に近づくしかないのと同じように、フェイトに会いたいのなら、執務官補佐なりオペレーターなり、もっとフェイトの傍でできる仕事を選ぶべきなのだろうか。
もちろん、なのははフェイトと一緒に居たいからという理由で魔法の仕事を選んだわけではない。けれど、沈んでいく自分の気持ちを制御できないなのはは、気持ちと一緒に考え方まで引きずり降ろされて、全ての事を悪い方へと考えてしまっていた。
――――瞳一杯に溜まった涙が流れ星のように静かに頬を伝う。
見栄も世間体も何もかも、その全てをかなぐり捨てて、フェイトの元へ行くことができたら……そんな事は決してできない自身の性格を十分理解した上で、なのははそれでも強く願った。
ふと街に目を向けると、カップルたちが楽しそうに腕を組んで歩いている姿が映った。ゼロ距離まで密着している彼らを見て、なのはの心は強く惹かれた。もし、フェイトとあんな風に一緒に居られたら……寂しい時に、彼女に強く抱きしめて貰えたり、ふとした瞬間にお互いの顔が近づきすぎてドキドキしたり、互いの愛情を表現するようにキスをしたり……現実には決してありえない妄想をなのはは止めることが出来なかった。
お互いの距離感を探りながら、いつも当り障りのない会話をする。それが今のなのはとフェイトのリアルだった。そんな中で、本当はフェイトが傍に居なくて心が張り裂けそうな程寂しいのだ、と伝えてしまったら、フェイトとの関係はどうなってしまうのだろう。
それを考えると、なのはは怖くなった。もし、万が一にでもフェイトがそんななのはの気持ちを受け止めてくれるなら良い。けれど、現実はきっとそんなに甘くない……もしかすると、なのはの事を重荷に感じて、今よりずっと距離を取られるかもしれない。
フェイトに怯えたような瞳を向けられる想像をして、なのはは足が震えた。急に体が寒くなった気がして、自分の体を両腕でかき抱く。
――――やはり今までの関係が一番いいよね……。
なのはは目の前のカップルを恨めしそうに眺めながら、諦めた様に息を吐いた。
(サンプルはここまで)
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【私は貴女のホトトギス】
◆◇◆
「フェイトちゃ~ん、今日は何の日でしょう?」
いつだって、敵襲は突然やってくるものだ。こちらの準備が終わるのを待ってから、攻撃をしていたら勝てる勝負も勝てないのだから……。
フェイトの脳内では、今まさに敵襲警報が鳴り響いていた。満面の笑顔を浮かべる愛おしい人が、唐突に投げかけてきた質問は、フェイトにとっては敵航空隊のミサイル攻撃と同義だった。
部屋は冷房が効いていて、ちょうど良い温度に保たれているはずなのに、背中から大量の汗が流れ始める。
「え……っと、ね。あの、あれだよ……」
フェイトは単語が出てこないと、一人ごちながら必死に時間稼ぎをする。記憶の糸を手繰り寄せようと、オーバーヒート寸前まで頭の中をフル回転させるが、毛糸一本のヒントも掴めそうになかった。
フェイトの様子がおかしい事に気付き始めたなのはは次第に表情が険しくなっていく。今やフェイトの冷や汗は背中だけでなく、額にまで浮かび上がってきていた。
「……フェイトちゃん、分かってないでしょ」
疑うようななのはの眼差しに、フェイトの動悸は増々速くなる。
「そ、そんなこと無いよ、ちゃんと分てるよ、ほんとだよ?」
フェイトは泳ぎそうになる視線をぐっと堪えて、必死に自身の無実を訴える。しかし、全く信用していないと言わんばかりに「ふーん」と素っ気ない返事が返ってきた。
困り果てたフェイトはチラリとヴィヴィオに目配せをするが、愛しの愛娘に助けてもらおうという魂胆はあっけなく消え去ってしまった。目が合った瞬間に、ヴィヴィオがしまったという表情になったと思ったら、ふいっと視線を逸らされてしまった。。
「…………フェイトちゃん、もしかしてヴィヴィオに頼ろうとした?」
追い討ちのような言葉にぎくりとする。ここで下手に言い訳をすると、後々とんでもない事になると思ったフェイトは「はい、すみません」と、素直に謝った。
なのはの追撃を受けて、ライフがすっかり無くなってしまったフェイトは、まだ早朝だというのに、今日一日無事に過ごせるのだろうか、という不安が脳裏を過る。
「はぁ……フェイトちゃん」
失望の入り混じった声で名前を呼ばれて、フェイトはとうとう観念した。
「うう……ごめんなさい、今日が何の日か判りません……」
「――――フェイトちゃんのばか……」
素直に謝ると、なのはからは小さな罵倒が返ってきただけだった。一言呟いただけで頬を膨らませたなのはは、プイッとそっぽを向いてスタスタとキッチンの奥へと引っ込んでしまったのだった。
◇◆◇
「ただいま~……」
ヴィータは気怠そうな声を上げて靴を脱ぐ。ハードな訓練か任務でもあったのか、その顔には疲労の色が濃く出ている。時間は夜の八時。帰宅時間としては早くはないが、それほど遅いというわけでもなかった。
「あ、ヴィータ、お帰り♪」
リビングに入ると、大好きなご主人(はや)様(て)の声と笑顔に迎えられて、ヴィータは疲れている事も忘れて、飛び込むようにはやての隣に座った。この場にあのおっぱい魔人ことシグナムが居たら、「まるで犬のようだな」と厭味たっぷりに言われていたに違いない。
しかし、今この場にシグナムが居ないことは、既に分かっていた。シグナムは同じ八神家の一員であるシャマルとザフィーラを連れて、遠征任務に向かっているため、どんなに急いでも明日の夜までは戻って来ることはない。
つまり、今ヴィータははやてを独り占めすることができるのだ。
「ただいま、はやて♪」
「お、今日のヴィータはちょっと甘えんぼさんやな♪」
ヴィータは家にはやて以外の誰も居ないことを良い事に、小さな子供のようにはやての腰に腕を回して抱きつく。そのままはやてのお腹に自分の頭を押し付けるようにしながら、膝枕を強要する。優しいはやては、ニコニコ笑いながら、ヴィータの頭を太ももに乗せると、そっと彼女の紅い髪を撫で始めた。
もし自分に尻尾があったら、ブンブンと勢いよく振っていたのだろう、ヴィータは自分の顔がすっかり惚けていることを自覚していた。見上げれば、はやての柔らかい笑顔が出迎えてくれる。
「そういえば、ヴィータはちょっとお疲れみたいやけど、何かあったん?」
「そうなんだよ、はやてぇ~……なのはのヤローがまた面倒くさいことを言っててさ~……」
そう言って、ヴィータは寝転んだ体勢のまま腕を組むと苦い顔に変わった。今日の事を思い出すと、胃のあたりがムカムカしてくる。
「あらら、なのはちゃん絡みかいな、それは大変そうやな」
しかし、そんなヴィータの怒りはコロコロと笑うはやての笑顔ですっかりと鎮火されてしまった。ヴィータ自身、自分の思考回路の単純さに少し呆れてしまう。けれど、それだけはやての笑顔には凄い力があるのだと、自分を納得させる。
「そうなんだよ~、今日も本当だったらもうちょっと早く帰れる所だったのにさぁ~…………」
「はやてちゃん! お風呂あがったですぅ~」
突然、リビングに入って来た予想外の存在にヴィータは固まった。リインとアギトの予定をきちんと把握していなかった事に猛烈な後悔の念を抱く。
「あ、リイン、それにアギトも……お湯加減はどうやった?」
「もうばっちり! 超いいお湯だったぜ…………あ」
ヴィータは満面の笑みを浮かべていたアギトとバッチリ目が合ってしまった。ヴィータはアギトから目を逸らし、錆びた機械のようにギギギと音を鳴らしながら起き上がると、
「よ、よう」
と引き攣った笑顔で、リインとアギトに挨拶をする。
「……あ、姉御?」
ヴィータのあられもない姿を目の当たりにして、アギトの声も震える。その奥でリインが両手を口に当てて必死に笑いを堪えている姿が見えた。リインにこの姿を見られたのはこれで何度目だろう。
「ど、どうしたアギト、声震えてるぞ……」
リイン達の好奇の視線に耐え、ヴィータは狙いをアギト一本に絞る。まだこれが初見のアギトになら、誤魔化すこともできるのではないかと考えたからだ。
「い、いや……どうしたって、それは姉御の方というか……」
「私がどうかしたか?」
「どうかって、えっと……さっき膝枕を……」
「な、何言ってんだ、悪い夢でも見たんじゃねーか?」
自分でも無理がある誤魔化し方だとは重々承知している。しかし、突然の出来事に対し、ヴィータはこれ以上のアイデアを持ち合わせていなかった。天にも祈る気持ちでヴィータはアギトを見る。
「あはははは、ヴィータちゃん、誤魔化し方が無茶苦茶ですぅ~」
ヴィータとアギトはリインの発言にぎょっと目を剥いた。二人してリインの方へ振り向くと、妖精サイズの彼女はぷかぷかと宙に浮いたまま、げらげらとお腹を抱えて笑っていた。
詰まる所、ヴィータの祈りは、天に届く前に部屋の奥で笑い転げている白髪の少女によってあっけなく蹴飛ばしてしまったのだった。
八神家のリビングでは、お腹がいたいですぅ、と言いながら笑い転げるリインと、耳まで真っ赤にしてフルフルと肩を震わせるヴィータ、その横で困ったように苦笑いを浮かべるはやてに、どうしていいか分からず狼狽しているアギト、の四人によって見事にカオスな空間が広がっていた。
「リイン! 笑い過ぎだ!!」
頭から湯気が出そうな程顔を真っ赤にしたヴィータが、羞恥に耐え切れずに怒鳴る。それを聞いたリインは「ひゃ~、ヴィータちゃんが怒ったですぅ~」と、全く堪えた様子もなく、楽しそうに笑いながらはやての背後へと隠れた。
「まぁまぁ、ヴィータ。ちょお落ち着こうか、な?」
「ぐ……だって、はやてぇ~」
はやてに宥められ、ヴィータは今にも泣きそうな声を上げる。そんなヴィータの頭に、はやてはそっと手を乗せた。
「ほら、お風呂でも入って、ゆっくりしたらえんちゃうかな? な?」
「う……うん、分かった。はやてがそう言うなら…………」
はやてのおかげで少し落ち着きを取り戻したヴィータは、はやての提案に素直に頷くと、風呂場へと向かった。
(中略)
「フェイトちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」
それは、ある朝のこと。
厄介な任務を立て続けに三つ程言い渡され、碌に寝ていない日々が数日続いた頃、フェイトはかなり疲労を溜めこんでいた。
きっと傍から見ていても、すぐに分かるほど疲れた顔をしていたのだろう。その証拠にコーヒーカップを手渡される際に、なのはから心配そうな顔を向けられた。
「うん、これくらい全然平気だよ」
と強がってみても、なのはの表情は和らぐことはなく、眉は依然として八の字のまま変わらない。
「ねぇ、フェイトちゃん……ちょっとお仕事休んだ方がいいんじゃないかな?」
躊躇いがちではあったが、ついにはこんな提案をされてしまう始末。それほどひどい顔なのだろうか、フェイトは後で鏡を見に行こうと思いながら、苦笑いを浮かべる。
「大丈夫だよ……なのはは本当に心配性なんだから」
「でも…………」
「本当に危なくなったら、ちゃんと休むから」
今は本当に大丈夫、とフェイトは付け加える。その言葉を信じたのか、それとも一度言い出したら決して曲げないフェイトの性格を把握しているからか、なのはは渋々頷いてくれた。
それでもやはり不安なのか、「本当に何かあったらすぐ休むんだよ」と念を押してきた。フェイトはなのはを安心させるように笑顔で「分かってる」と伝える。そして、きゅっと優しくなのはの手を握ると、「ならいいけど」と唇を尖らせつつも納得してくれたようだった。
フェイトとしては、最初の問いかけから始まった一連の流れに対して完璧な対応が取れたと思っていたし、最後は少し頬を染めるなのはを見ることができて、今日は一日良い事があるかもしれないとポジティブな気持ちになれた。
その後、鏡の前でフェイトは思った以上にひどい目の隈に少しげんなりもしたが、晴れやかな気分のまま颯爽と家を出ることが出来たのだった。
(サンプルはここまで)
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来週行われるリリマジ20に向けて、新刊無事入稿できましたのでサンプルをアップします!
イベント続きだったので、かなりギリギリでしたが何とかものになって良かったです\(^0^)/
内容はいつも通りなのフェイです♪
大人なのフェイはヴィヴィオそっちのけでイチャイチャしてます(ヲイ
では、以下からどうぞ(※百合注意)
あ、あと表紙サンプルもあります

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【貴女に贈るリンドウの花】
◆◇◆
――――離れ離れでも、きっと同じ夢、見れているよね?
◇
なのはは管理局の大きな窓から外を眺めていた。次元管理局の本局は、次元空間に漂う巨大な人工島で、そこから外を眺めるといくつもの星々や銀河が鮮やかに輝いているのが見える。 本局に勤めるようになった当初こそ新鮮だった光景は、いまではすっかり見慣れた景色になっていた。
なのはは窓ガラスを人差し指で撫でると、遠い次元世界へ向かった友人のことを想い浮かべる。鮮やかに輝く金髪をなびかせて、いつも楽しそうに笑う彼女を想う度、なのはは胸が苦しくなった。それでも想わずにはいられないこの気持ちは一体何なのか……。
もうどのぐらい会っていないだろうか、最後にあった日のことをなのははぼんやりと思い出す。
◇
夏の厳しい日差しもようやく翳りを見せ始め、木々も少しずつその色を変え始めた頃。なのはとフェイトは久しぶりに一緒に帰宅していた。今日はこのままなのはの家に行き、時間の許す限りのんびりとおしゃべりをする予定だった。
「なのは、最近、管理局の仕事の方はどう?」
「うん、最近できることが増えてきて楽しいよ♪」
そう答えるなのはは、ツインテールを卒業し、ポニーテールに髪型を変えたばかりということもあって、少し大人びて見える。
「そっか、でもなのははすぐ無茶するから、ちょっと心配……無理してない?」
「にゃはは、も~フェイトちゃんは心配性だなぁ~、全然大丈夫だよ♪ それよりも、私はフェイトちゃんの方が心配、そっちこそ無理してない?」
「うん、無理なんか全然してないよ」
嬉しそうに目を細めてフェイトがそう言うと、なのははジッとその瞳を覗き込む。嘘をついていないかどうかチェックをしているのだと、以前なのはが言っていた。
嘘をついているつもりはなくても、ぐっと互いの顔の距離が近づくため、フェイトはいつもドギマギしてしまい、いつも目を逸らしそうになる。けれどフェイトは、なのはを近くに感じられるこのやり取りが好きだった。
今回も、逸る鼓動を耳の奥で感じながら、じっとなのはを見つめ返していた。黒目がちな彼女の瞳は、空を思わせる透明感を持っていて、見つめていると吸い込まれそうになる。
ひとしきりチェックをして満足したのか、なのはは再び笑顔になると、くるっと体を翻してフェイトの横に並ぶ。
「フェイトちゃんも無茶しないでね?」
「……うん」
肩を並べて歩きながら短い受け答えをする。お仕事の話はそこで打ち切りとなった。
なのはの家に着くと、二人の話は色々な方向へと拡散していった。アリサやすずか、はやて達との間でこんな話があったとか、近所にできたカフェのスイーツが美味しかったとか、リンディ母さんがますます日本文化にどっぷりで困っているとか……。
そして最後には将来の話になって、これから先、はやてとなのはとフェイトの三人で色々な事を守れるようになりたいね、と言って二人で笑い合ったのだった。
◇
あれから三週間。
フェイトは長期任務で管理外世界へ行っていて、通信も通らない僻地のため、暫らくの間、フェイトの顔すら見ていない。フェイトの長期の任務も、その間顔を見ることが出来ない事も別に珍しい事ではない。それでもなのはは、これらの事にいつまで経っても慣れそうになかった。
昨日より今日、今日より明日。日に日に強くなっていく胸の痛みにいつか耐えられなくなるのではないかと、なのはは最近よく思う。痛みに耐えられなくなったときに一体自分はどうなってしまうのか、それを考えると怖くなった。
「なのはちゃん!」
突然背後から声をかけられて、なのはの肩がビクッと跳ねた。振り向くとそこには親友のはやてが立っていた。
「はやてちゃん……珍しいね、今日は本局なんだ」
「まあ、ちょっとクロノ君に呼ばれてもうてな」
そう言って苦笑いを浮かべるはやては、「それよりも、ずっと外見とったみたいやけど、どうしたん?」と軽い口調で尋ねてきた。あまり見られたくない所を見られてしまったと、なのはは内心、苦い顔になる。
はやてに気取られないように表面上は無表情を装い、「別にちょっと外を眺めていただけ」と素っ気なく答えた。
「そっか、なのはちゃんも最近忙しいみたいやし、あんまり無茶せんほうがええよ」
はやてはなのはの言葉を疑う様子もなく、そう付け加えると「じゃあ、ウチは呼ばれとるから」と言って、軽く手を振ってその場を後にした。
はやての後ろ姿を眺めながら、なのはは罪悪感で針で刺されたような胸の痛みを覚えていた。
(中略)
独りきりの帰り道。
すこし肌寒い初秋の夜風がさらりとなのはの頬を撫でた。
歩きなれた下校道で、無意識の内にその歩調は遅くなる。フェイトと並んで歩く時のスピードがすっかり身体に染みついていることに気付いて、なのはの気分はますます暗くなった。どんなに歩調を合わせた所で、なのはの隣にフェイトの姿が現れる事はない、その事実だけがなのはの心に降り積もってゆく。
「……やっぱり寂しいよ、フェイトちゃん…………」
吐息と共に零れた言葉は、紛れもないなのはの本心。けれど、その言葉を伝えたい人は今この場には居ない。そんななのはの小さな呟きは、街の喧騒の中に溶けて無くなってしまった。
ワイワイと楽しそうに話をしながらすれ違って行く学生たちを横目で見る度に、なのはの心はヤスリのようなもので擦り削られていく。
――――ガリガリ、ガリガリ
耳の奥で心が削られていく音が聞こえる。その度に瞼の裏に金色の髪をなびかせて微笑むフェイトの姿が映った。まるで、その光景だけがなのはの心を正気に保っているかのように……。
なのはの記憶の中でもしかしたら美化されているのかもしれない、それでも瞼の裏に映るフェイトは本当に嬉しそうに笑っていた。それが、なのはには嬉しかった。
不意に目頭が熱くなって、視界が歪んだ。
自分の瞳に涙が溜まり始めたことに気付いて、なのはは慌てて空を見上げる。よく晴れた夜空だったが、煌々と光る街灯に遮られて星はほとんど見えなかった。
――――これじゃ曇っているのと一緒だよね。
夜空を見上げながら、なのはは管理局へ勤めていてもフェイトの姿を見ることができない自分自身の境遇と重ねていた。星を見たいなら街灯の光が届かない距離まで星に近づくしかないのと同じように、フェイトに会いたいのなら、執務官補佐なりオペレーターなり、もっとフェイトの傍でできる仕事を選ぶべきなのだろうか。
もちろん、なのははフェイトと一緒に居たいからという理由で魔法の仕事を選んだわけではない。けれど、沈んでいく自分の気持ちを制御できないなのはは、気持ちと一緒に考え方まで引きずり降ろされて、全ての事を悪い方へと考えてしまっていた。
――――瞳一杯に溜まった涙が流れ星のように静かに頬を伝う。
見栄も世間体も何もかも、その全てをかなぐり捨てて、フェイトの元へ行くことができたら……そんな事は決してできない自身の性格を十分理解した上で、なのははそれでも強く願った。
ふと街に目を向けると、カップルたちが楽しそうに腕を組んで歩いている姿が映った。ゼロ距離まで密着している彼らを見て、なのはの心は強く惹かれた。もし、フェイトとあんな風に一緒に居られたら……寂しい時に、彼女に強く抱きしめて貰えたり、ふとした瞬間にお互いの顔が近づきすぎてドキドキしたり、互いの愛情を表現するようにキスをしたり……現実には決してありえない妄想をなのはは止めることが出来なかった。
お互いの距離感を探りながら、いつも当り障りのない会話をする。それが今のなのはとフェイトのリアルだった。そんな中で、本当はフェイトが傍に居なくて心が張り裂けそうな程寂しいのだ、と伝えてしまったら、フェイトとの関係はどうなってしまうのだろう。
それを考えると、なのはは怖くなった。もし、万が一にでもフェイトがそんななのはの気持ちを受け止めてくれるなら良い。けれど、現実はきっとそんなに甘くない……もしかすると、なのはの事を重荷に感じて、今よりずっと距離を取られるかもしれない。
フェイトに怯えたような瞳を向けられる想像をして、なのはは足が震えた。急に体が寒くなった気がして、自分の体を両腕でかき抱く。
――――やはり今までの関係が一番いいよね……。
なのはは目の前のカップルを恨めしそうに眺めながら、諦めた様に息を吐いた。
(サンプルはここまで)
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【私は貴女のホトトギス】
◆◇◆
「フェイトちゃ~ん、今日は何の日でしょう?」
いつだって、敵襲は突然やってくるものだ。こちらの準備が終わるのを待ってから、攻撃をしていたら勝てる勝負も勝てないのだから……。
フェイトの脳内では、今まさに敵襲警報が鳴り響いていた。満面の笑顔を浮かべる愛おしい人が、唐突に投げかけてきた質問は、フェイトにとっては敵航空隊のミサイル攻撃と同義だった。
部屋は冷房が効いていて、ちょうど良い温度に保たれているはずなのに、背中から大量の汗が流れ始める。
「え……っと、ね。あの、あれだよ……」
フェイトは単語が出てこないと、一人ごちながら必死に時間稼ぎをする。記憶の糸を手繰り寄せようと、オーバーヒート寸前まで頭の中をフル回転させるが、毛糸一本のヒントも掴めそうになかった。
フェイトの様子がおかしい事に気付き始めたなのはは次第に表情が険しくなっていく。今やフェイトの冷や汗は背中だけでなく、額にまで浮かび上がってきていた。
「……フェイトちゃん、分かってないでしょ」
疑うようななのはの眼差しに、フェイトの動悸は増々速くなる。
「そ、そんなこと無いよ、ちゃんと分てるよ、ほんとだよ?」
フェイトは泳ぎそうになる視線をぐっと堪えて、必死に自身の無実を訴える。しかし、全く信用していないと言わんばかりに「ふーん」と素っ気ない返事が返ってきた。
困り果てたフェイトはチラリとヴィヴィオに目配せをするが、愛しの愛娘に助けてもらおうという魂胆はあっけなく消え去ってしまった。目が合った瞬間に、ヴィヴィオがしまったという表情になったと思ったら、ふいっと視線を逸らされてしまった。。
「…………フェイトちゃん、もしかしてヴィヴィオに頼ろうとした?」
追い討ちのような言葉にぎくりとする。ここで下手に言い訳をすると、後々とんでもない事になると思ったフェイトは「はい、すみません」と、素直に謝った。
なのはの追撃を受けて、ライフがすっかり無くなってしまったフェイトは、まだ早朝だというのに、今日一日無事に過ごせるのだろうか、という不安が脳裏を過る。
「はぁ……フェイトちゃん」
失望の入り混じった声で名前を呼ばれて、フェイトはとうとう観念した。
「うう……ごめんなさい、今日が何の日か判りません……」
「――――フェイトちゃんのばか……」
素直に謝ると、なのはからは小さな罵倒が返ってきただけだった。一言呟いただけで頬を膨らませたなのはは、プイッとそっぽを向いてスタスタとキッチンの奥へと引っ込んでしまったのだった。
◇◆◇
「ただいま~……」
ヴィータは気怠そうな声を上げて靴を脱ぐ。ハードな訓練か任務でもあったのか、その顔には疲労の色が濃く出ている。時間は夜の八時。帰宅時間としては早くはないが、それほど遅いというわけでもなかった。
「あ、ヴィータ、お帰り♪」
リビングに入ると、大好きなご主人(はや)様(て)の声と笑顔に迎えられて、ヴィータは疲れている事も忘れて、飛び込むようにはやての隣に座った。この場にあのおっぱい魔人ことシグナムが居たら、「まるで犬のようだな」と厭味たっぷりに言われていたに違いない。
しかし、今この場にシグナムが居ないことは、既に分かっていた。シグナムは同じ八神家の一員であるシャマルとザフィーラを連れて、遠征任務に向かっているため、どんなに急いでも明日の夜までは戻って来ることはない。
つまり、今ヴィータははやてを独り占めすることができるのだ。
「ただいま、はやて♪」
「お、今日のヴィータはちょっと甘えんぼさんやな♪」
ヴィータは家にはやて以外の誰も居ないことを良い事に、小さな子供のようにはやての腰に腕を回して抱きつく。そのままはやてのお腹に自分の頭を押し付けるようにしながら、膝枕を強要する。優しいはやては、ニコニコ笑いながら、ヴィータの頭を太ももに乗せると、そっと彼女の紅い髪を撫で始めた。
もし自分に尻尾があったら、ブンブンと勢いよく振っていたのだろう、ヴィータは自分の顔がすっかり惚けていることを自覚していた。見上げれば、はやての柔らかい笑顔が出迎えてくれる。
「そういえば、ヴィータはちょっとお疲れみたいやけど、何かあったん?」
「そうなんだよ、はやてぇ~……なのはのヤローがまた面倒くさいことを言っててさ~……」
そう言って、ヴィータは寝転んだ体勢のまま腕を組むと苦い顔に変わった。今日の事を思い出すと、胃のあたりがムカムカしてくる。
「あらら、なのはちゃん絡みかいな、それは大変そうやな」
しかし、そんなヴィータの怒りはコロコロと笑うはやての笑顔ですっかりと鎮火されてしまった。ヴィータ自身、自分の思考回路の単純さに少し呆れてしまう。けれど、それだけはやての笑顔には凄い力があるのだと、自分を納得させる。
「そうなんだよ~、今日も本当だったらもうちょっと早く帰れる所だったのにさぁ~…………」
「はやてちゃん! お風呂あがったですぅ~」
突然、リビングに入って来た予想外の存在にヴィータは固まった。リインとアギトの予定をきちんと把握していなかった事に猛烈な後悔の念を抱く。
「あ、リイン、それにアギトも……お湯加減はどうやった?」
「もうばっちり! 超いいお湯だったぜ…………あ」
ヴィータは満面の笑みを浮かべていたアギトとバッチリ目が合ってしまった。ヴィータはアギトから目を逸らし、錆びた機械のようにギギギと音を鳴らしながら起き上がると、
「よ、よう」
と引き攣った笑顔で、リインとアギトに挨拶をする。
「……あ、姉御?」
ヴィータのあられもない姿を目の当たりにして、アギトの声も震える。その奥でリインが両手を口に当てて必死に笑いを堪えている姿が見えた。リインにこの姿を見られたのはこれで何度目だろう。
「ど、どうしたアギト、声震えてるぞ……」
リイン達の好奇の視線に耐え、ヴィータは狙いをアギト一本に絞る。まだこれが初見のアギトになら、誤魔化すこともできるのではないかと考えたからだ。
「い、いや……どうしたって、それは姉御の方というか……」
「私がどうかしたか?」
「どうかって、えっと……さっき膝枕を……」
「な、何言ってんだ、悪い夢でも見たんじゃねーか?」
自分でも無理がある誤魔化し方だとは重々承知している。しかし、突然の出来事に対し、ヴィータはこれ以上のアイデアを持ち合わせていなかった。天にも祈る気持ちでヴィータはアギトを見る。
「あはははは、ヴィータちゃん、誤魔化し方が無茶苦茶ですぅ~」
ヴィータとアギトはリインの発言にぎょっと目を剥いた。二人してリインの方へ振り向くと、妖精サイズの彼女はぷかぷかと宙に浮いたまま、げらげらとお腹を抱えて笑っていた。
詰まる所、ヴィータの祈りは、天に届く前に部屋の奥で笑い転げている白髪の少女によってあっけなく蹴飛ばしてしまったのだった。
八神家のリビングでは、お腹がいたいですぅ、と言いながら笑い転げるリインと、耳まで真っ赤にしてフルフルと肩を震わせるヴィータ、その横で困ったように苦笑いを浮かべるはやてに、どうしていいか分からず狼狽しているアギト、の四人によって見事にカオスな空間が広がっていた。
「リイン! 笑い過ぎだ!!」
頭から湯気が出そうな程顔を真っ赤にしたヴィータが、羞恥に耐え切れずに怒鳴る。それを聞いたリインは「ひゃ~、ヴィータちゃんが怒ったですぅ~」と、全く堪えた様子もなく、楽しそうに笑いながらはやての背後へと隠れた。
「まぁまぁ、ヴィータ。ちょお落ち着こうか、な?」
「ぐ……だって、はやてぇ~」
はやてに宥められ、ヴィータは今にも泣きそうな声を上げる。そんなヴィータの頭に、はやてはそっと手を乗せた。
「ほら、お風呂でも入って、ゆっくりしたらえんちゃうかな? な?」
「う……うん、分かった。はやてがそう言うなら…………」
はやてのおかげで少し落ち着きを取り戻したヴィータは、はやての提案に素直に頷くと、風呂場へと向かった。
(中略)
「フェイトちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」
それは、ある朝のこと。
厄介な任務を立て続けに三つ程言い渡され、碌に寝ていない日々が数日続いた頃、フェイトはかなり疲労を溜めこんでいた。
きっと傍から見ていても、すぐに分かるほど疲れた顔をしていたのだろう。その証拠にコーヒーカップを手渡される際に、なのはから心配そうな顔を向けられた。
「うん、これくらい全然平気だよ」
と強がってみても、なのはの表情は和らぐことはなく、眉は依然として八の字のまま変わらない。
「ねぇ、フェイトちゃん……ちょっとお仕事休んだ方がいいんじゃないかな?」
躊躇いがちではあったが、ついにはこんな提案をされてしまう始末。それほどひどい顔なのだろうか、フェイトは後で鏡を見に行こうと思いながら、苦笑いを浮かべる。
「大丈夫だよ……なのはは本当に心配性なんだから」
「でも…………」
「本当に危なくなったら、ちゃんと休むから」
今は本当に大丈夫、とフェイトは付け加える。その言葉を信じたのか、それとも一度言い出したら決して曲げないフェイトの性格を把握しているからか、なのはは渋々頷いてくれた。
それでもやはり不安なのか、「本当に何かあったらすぐ休むんだよ」と念を押してきた。フェイトはなのはを安心させるように笑顔で「分かってる」と伝える。そして、きゅっと優しくなのはの手を握ると、「ならいいけど」と唇を尖らせつつも納得してくれたようだった。
フェイトとしては、最初の問いかけから始まった一連の流れに対して完璧な対応が取れたと思っていたし、最後は少し頬を染めるなのはを見ることができて、今日は一日良い事があるかもしれないとポジティブな気持ちになれた。
その後、鏡の前でフェイトは思った以上にひどい目の隈に少しげんなりもしたが、晴れやかな気分のまま颯爽と家を出ることが出来たのだった。
(サンプルはここまで)
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