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【夏コミ新刊サンプル】迷い星と茜色の空―前編―

みなさん、ごきげんよう!

初!夏コミ参戦に向けて、新刊入稿しましたので(間に合った!)、サンプルをアップします!
タイトルをご覧のとおり、前編です……ええ、間に合ったと言いつつ、間に合わなかった (白目
……いや、初心に帰って、前編・後編に分けたんです!……あ、すみません、物を投げないで下さい~。

と、とりあえず、サンプルUPしますね(ニッコリ
新刊は、なのはシリーズで、24歳ぐらいのなのフェイが、管理局員として色々頑張るお話です!

では、以下からどうぞ~
(※百合注意
----------------------------------------------------
【迷い星と茜色の空―前編―】
 
     ◆◇◆
 
 ――新暦七十九年、四月。
 その艦船は、無事任務を終えて、帰還の途についていた。船内は、任務を終えた達成感で満たされており、乗務員の表情もどことなく明るい。それでも、彼らの表情が緩みきることは無かった。それは、彼らは次元航行がいかに危険なものかを十分に理解している証といえよう。
 
「ん? これは? ……館長」
 
「どうした?」
 
 そんな中、突然通信士が館長に声を掛けてきた。その声色に慌てた様子はなく、館長であるその男も落ち着いて応じる。
 
「特定座標で、奇妙な魔力流を感知しました。ここから、少し離れているので、本船への影響は無いと思いますが、どうされますか?」
 
 館長の男は逡巡したが、すぐに顔を上げると、通信士の女性にそのデータをモニターに映すよう伝える。
 
「ふーむ……今まで見たことがないな」
 
 映し出されたデータを見て、館長は唸った。そのデータは、中心点に向かって魔力が流れ込んでいて、まるで魔力のブラックホールとでも言う様な、異様なデータだったのだ。過去に十数年と次元航行をしてきたが、このような現象を見たことは一度も無い。
 
「データの記録だけはしておこう。本艦はこのままの進路で管理局本局へ戻る。取得したデータは、私の方から本局に調査依頼をしておこう」
 
「了解しました」
 
 未知のリスクの方がかなり大きいと判断した館長は、そのままの進路をとることにして、通信士の女性にデータの取得指示を出す。指示を受けた女性は慣れた手つきで作業に移った。おそらく数分もしない内に作業を完了するだろう。
 館長は、ふうっと軽く息を吐くと、館長席の背もたれにその身を預けるのだった。
 
      ◇
 
「――――ということがあってね」
 
「ふむ、それはなかなか興味深いな」
 
「そう言うと思って、データを持ってきてやったよ」
 
 そう言って、男はにやりと笑う。
 
「ははは、なるほど。そうきたか……これは一本取られたな」
 
 男の言葉を受けて、クロノは参ったと肩をすぼめて笑った。つまりこの男は、初めからクロノにこの件を調べてもらうつもりだったのだ。
 苦笑しながらクロノは頭の中で、この件をユーノに依頼することに勝手に決める。あの学者気質の男なら、魔法のブラックホールなどといういかがわしい案件、いくら忙しくてもきっと興味はあるはずだ、とクロノは心の中で意地悪じみた笑顔を浮かべた。
 
「ところで、クローネ。今回は、他には問題なかったのか?」
 
 クローネと呼ばれた男は穏やかに笑うと、「ああ、今回の任務は平和そのものだったさ」と答える。
 彼は、魔法のブラックホールを見つけた船の館長で、クロノの同期だ。出世頭のクロノに比べれば地位は下だが、気さくな性格もあって今でもこうしてクロノと仕事の話や世間話をする間柄だった。
 クロノはクローネの言葉を聞いて、「それは良かった」と安心したように呟く。その姿は、世界がいつまで平和でいられるだろうかと、いつも心配している彼らしいものだった。
 クローネは、ふと先日ヴェロッサと話をした時の事を思い出した。『クロノは出世するには優しすぎる』、と不安を漏らしていたクローネに対し、ヴェロッサは、『そうだね、でも、だからこそまだこの世界の空は青いんだろうね』と返してきたことがあった。
 
「……確かにそうかもな」
 
 クローネは、クロノが安堵する姿を見ながら、小さく呟き、ひっそりと目を細めるのだった。
 
 
 
     ◇◆◇
 
「あれ? フェイトちゃんもその任務に参加するの?」
 
「うん、そうだけど……もしかして、なのはも?」
 
「そうなんだ~。じゃあ、フェイトちゃんと一緒の任務ってこと? 久しぶりだから楽しみだなぁ♪」
 
 そう言って満面の笑顔を浮かべるなのは。そんな彼女の笑顔を受けて、「そうだね」とフェイトはへにゃりと笑う。
 
「じゃあ、ママ達はしばらく遠征?」
 
「うん、そうだね」
 
「ごめんね、ヴィヴィオ」
 
「ううん、お仕事なんだし、気にしないで、頑張って!」
 
 三人で囲む食卓で、訊ねられた質問になのはとフェイトは申し訳なさそうに、眉根を寄せて謝るが、一方のヴィヴィオは平然とした様子で、パクパクとご飯を食べ続けている。
 魔法学院初等科の五年生になったヴィヴィオにとって、最近は家族よりも友達といる方が楽しそうだ。去年から、ストライクアーツの大会に参加するようになって、増々友好の輪が広がっていて、もうママ達の出番はなくなりつつあるのかもしれない。
 なのはは、特に悲しむ様子のない我が娘に、少しだけ寂しさを覚える。それは向かいに座るフェイトも同じようで、互いに目が合うと、二人して苦笑した。
 そんな母親たちの様子など気づかないヴィヴィオは、「あんまり無茶せず、ちゃんと帰って来てね」と、いつものように両親を労うのだった。
 
      ◇
 
 ――新暦七十九年七月。
 次元航行船のブリッジにて、なのはとフェイトは、お互いに今回の任務について確認していた。
 
「今回もロストロギア絡みなんだよね?」
 
「うん。ただ今回のロストロギアは、まだ休眠状態だからそこまで危険ではないはずだよ」
 
「そうなの?」
 
 フェイトの言葉になのはは驚く。その表情は言外にそんな安全な任務に自分とフェイトの二人で当る必要はないのでは、という疑問が滲み出ていた。
 
「うん。ただ、文献によるとこのロストロギアの力は絶大で、あの“ゆりかご”と同等の力を秘めているみたいなの。旧ベルカ時代、もしこのアイテムが使われていたら、世界はもっと混沌を極めただろうと云われてる。まぁ、結局このアイテムは“ゆりかご”起動時には間に合わず、歴史にある通り戦争は終結したんだけどね」
 
「へぇ~! じゃあ、今回のロストロギアってまだ完成してないの?」
 
 なのはの何気ない質問に、フェイトの表情が曇る。
 
「……それが、そうでもないんだ。戦争終結後、それでも敗北を認められない一部の人たちが、秘密裏に研究を進めていたから、完成はしている……幸いなことに、使われる前にその人たちは取り押さえられたみたいだけど、その際にこのアイテムだけは転送して、どこかへ隠してしまってたんだ……それが今回見つかったロストロギアってわけ」
 
「そっか、それで私とフェイトちゃんが呼ばれたわけか~」
 
「うん……万が一の事もあるし。 ……ただ、私の個人的な意見としては、なのはには、この任務に参加してほしくなかったんだけど……」
 
 なるほど、それでこんなに表情が曇っているのか、なのははそう納得して微笑する。
 
「もう、相変わらず心配性だなぁ~大丈夫だよ、フェイトちゃん」
 
 そう言うと、フェイトから不満そうな目で睨まれる。
 
「……そんなこと言って、なのははすぐ無茶するから心配だよ」
 
 その言葉に、なのはのほうもムッとした表情に変わる。売り言葉に買い言葉。
 
「フェイトちゃんだって、いっつも無茶してるじゃない! 私達家族が一体どれだけ心配してるか……」
 
「わ、私のは無茶じゃないし! ちゃんと危険かどうかは計算して、大丈夫だって判断してるし!」
 
「じゃあ、この間あんなに傷だらけで帰ってきて、あれも無茶じゃないんだ! シャマル先生にすっごい怒られてたのに!」
 
「うっ……あ、あれは、その……」
 
 なのはの口撃にフェイトは口ごもってしまう。つい先日の出来事だけに、まだフェイトの記憶にもシャマルの鬼のような表情が鮮明に残っていた。

「あれに比べれば、なのはの方が無茶はしてないと思うけどなぁ~」

 なのはの追撃に、フェイトは唸りだす。確かに、ヴィヴィオが学校に通うようになって、なのはの無茶は明らかに減っていた。それは家で待っているヴィヴィオを泣かせるような事はしないという、母親としての自覚のなせる技なのかもしれない。

「そうかもしれないけど……でもやっぱり心配なんだ」

「フェイトちゃん……」

 それでも、とフェイトは憂いを帯びた紅い目でなのはを見つめると、なのはの方から、スッと指と指を絡ませてきて、フェイトの心臓は軽く跳ねる。

「なのは……」

 きゅっとその指を握り返せば、珍しくなのはが少し頬を染めたので、やっぱり可愛いな、とフェイトはついそんなことを考えてしまう。

「……ゴホン、ではそろそろ出航しよう!」

 館長の咳払いの意味に気付かない二人は、手を繋いだまま船が動き出す様子をブリッジで眺めていたのだった。
 
      ◇
 
 世の中不思議なもので、上手くいく時は小さな事件さえ起こることなく物事が進むもので、あれほどの逸話をもつロストロギアは、何の滞りもなく無事に回収された。
 懸念されていたロストロギアの起動もなく、封印処理を完了した一同は、すでに帰還の途に就いていた。加えて言うと、なのはとフェイトの出番は、今回全くと言っていいほど無かったのだ。

「お疲れ、なのは」

「にゃはは、何もしてないけどね」

「まぁ、それは私も一緒だし」

 そういって苦笑いをすると、フェイトは両手に持っていた飲み物を片方だけなのはに渡して、彼女の隣に腰かける。
 誰も居ない自動販売機の横に置かれているソファーの上で、ぼんやりと窓の外を眺めると、いくつもの星々が静かに輝きを放っている。

「でもさ、何もなくて良かったよ、私としては。後は、このまま無事に帰ることができれば……」

「も~、フェイトちゃんは本当に心配性だなぁ~」

「まぁ、これはもう職業病みたいなものだからね」

「ふーん、あ、でも確かにクロノ君もそうだもんね~じゃあ、ティアナもフェイトちゃんみたいになっちゃうのかなぁ~」

「……そうかも」

「え~、何か嫌だなぁ~」

「嫌って……私たち執務官は法律面や政治面も含めて色々な可能性を考えながら仕事してるから、それが癖になってて、だから仕方無いんだよ! ……うう」

 なのはに嫌と言われてショックを受けたフェイトは、うな垂れてしまう。

「そうなんだ……」

 なのははぽつりと呟くと、フェイトの肩にポスンと頭を乗せる。

 「そんなに大変なんだね、フェイトちゃん、私には全然仕事の話してくれないから、ちょっとでも聞けると嬉しい」

「なのは……」

「あのね、フェイトちゃん。私だけじゃなく、ヴィヴィオもだけど、いつもフェイトちゃんの助けになりたいって、思ってるの。だから、頼りないかもしれないけど、もっと私達の事を頼って欲しいな…………」

 ゆっくりとした口調で紡がれた言葉に、フェイトは胸が詰まった。

「頼りないなんて……そんな事ないよ。家で待ってくれてる人が居るって事が、私にとってはとても大切で、それだけで元気もらってるんだから」

 フェイトはそう言うとなのはの肩を掴んで抱き寄せる。なのはの方は、身を預けるようにフェイトの肩に頭を乗せ、先程のフェイトの言葉を噛み締めるように瞳を閉じた。
 フェイトはそんななのはのおでこに軽いキスを落とすと、窓の外に再び目を向ける。星が輝きを静かに讃えている音の無い宇宙空間の中で、隣にいるなのはの息遣いだけがより鮮明になっていくようだ。
 
 ビービービー…………
 
 静寂に身を包んでいたせいかもしれない。
 
 
『異常事態発生、異常事態発生……』
 
 
 突然の事態に茫然としてしまう二人。
 
 完全に出遅れた二人は、立ち上がろうとした矢先、目の前に突如現れたソレに飲み込まれてしまう。


「な……の………………は……っ」


 アラートの鳴り響く艦内で、自動販売機の横には二つの飲みかけの缶だけが、無言で転がっていた。



     ◇◆◇

「……ここは?」

 暗闇に呑まれたはずのフェイトが次に目にしたのは、一面のすすき畑だった。
 フェイトはつい先程、自分の身を襲った出来事を思い出す。
 けたたましく鳴り響くアラートと、赤く明滅するランプが艦内を染める中、魔力のいびつな流れが発生したと、通信士からの緊急連絡が聞こえた。それを聞いて、何があったのかとブリッジへ行こうとした瞬間、真っ暗な穴が目の前に現れ、一瞬にして二人を飲み込んだのだ。
フェイトは、改めて周りを見渡すと、そこは先程までの静寂に包まれた宇宙ではなかった。見渡す限りのすすき畑は、オレンジ色の夕日に照らされ金色に輝いていて、ざあざあと風に揺れている様子は、不思議と強い郷愁の念を呼び起こした。

「そうだ、なのは! なのは、大丈夫?」

 フェイトは声を張り上げながら、ぐるりと辺りを見回す。

「……うん、なんとか~」

 ススキ畑の中からひょこりと腕だけが現れて、ブンブンと横に振られる。フェイトが慌てて駆け寄ると、「腰が抜けちゃったみたい」と少しはにかんだ表情で地面に座り込んでいるなのはの姿があった。
 特に外傷が見当たらないことを確認すると、フェイトは小さく笑って、慣れた手つきでひょいと彼女を抱きあげる。なのはの方も、これまた慣れた手つきでフェイトの首に腕を巻き付けてきた。俗に言うお姫様抱っこと呼ばれるやつだが、この二人がやると堂に入り過ぎていて、 ときめくような感じがないのが少し残念なようにも思える。

「とりあえず、どこかに人が居ないか調べてみようか」

「そうだね~」

 フェイトの提案に頷くものの、なのはは特に何をするでもなく、じっとフェイトの顔を覗きこむ。

「? どうしたの、なのは?」

「あのね、お仕事中のフェイトちゃんの顔、こんなに近くで見たこと無かったなぁ~って思って」

「あ、うん……あのね、なのは。ちゃんと人を探そう?」

「う~ん、そうなんだけど、ほら、私、腰抜けちゃって動けないし」

「うん…………ん?」

 なのはとの受け答えで、要領を得ないフェイトは、釈然としない表情をしたが、これ以上話をしても、何も進みはしないだろうと思い、自分だけでもちゃんとしようと、改めて人影を探す。
 しかし、どこを見てもすすき畑しか見えず、人の気配は全くなかった。

「……ここ、どこなんだろう?」

「I don’t know . This place has not been registered in data base yet.(分かりません。管理局のデータベースに、この場所は、登録されていません)」

 フェイトの独り言に、相棒である金色の斧(バルディッシュ)が現状を報告する。

「登録されてない場所? ……この辺にまだそんな所があったんだね~」

「まぁ、管理局も完璧じゃないのはそうだけど……でも、ここは本局からあまり離れてないから、そんなハズはないと思うんだけど……うーん」

 フェイトは記憶を手繰り寄せようと、眉根をギュッと寄せ、瞳を閉じる。けれど、いくら記憶を掘り起こしてみても、この不思議な星の情報は得られそうになかった。

「……とりあえず、ここに住んでる人を探そうか」

 ふぅっと軽く息を吐くと、フェイトは悩むのを止めて前を向く。

「ふふっ、そうだね、フェイトちゃん♪」

 こんな状況なのに、なぜか両腕に収まっているなのはからは、ご機嫌な声色が返ってくる。
 
「……随分、ご機嫌ですね、ナノハサン」

「にゃはは♪」

 そんななのはを尻目に、フェイトは飛行姿勢を取った。この付近に人の気配がしないので、少し探索範囲を広げた方が良いだろう。

「……あれ?」

 そこでフェイトはある異変にようやく気付いた。

「どうしたの、フェイトちゃん?」

「え? あ、えっとね、何だか魔法が上手く使えないというか……」

 フェイトはそう言うと、意識を集中する。

「やっぱり。上手く魔力結合ができてないみたい」

「それって……」

「うん、AMF(Anti Magilink-Field)が効いてるみたいだね」
その言葉を聞いたなのはは、徐に腕を上げ、その掌に丸い魔弾を生成する。

「あ……」

 しかし、桃色の魔弾は生成したと同時にその姿を消した。

「本当だね……」

「ふぅ、ちょっと疲れるけど、仕方ないか」

 フェイトはそう言うと、今度こそふわりと宙に浮いた。飛行の魔法が打ち消されないように、自分の体の表面に魔力の壁を作ったのだ。その証拠に薄く金色の魔力光がフェイトの体を包んでいる。当然、この方法は通常の飛行の倍以上の魔力を消費するので、本来なら、この後何が起こるか分からない未知の世界での使用は控えたほうがいい。

「だ、大丈夫? なのは、降りようか?」

「大丈夫だから、じっとしてて」

 なのはの焦ったような声色に、やはり腰を抜かしたというのは嘘だったんだな、と吹き出しそうになるのを必死に堪えて、フェイトは軽く笑顔を返す。

「フェイトちゃん、だ~い好き♪」

 すると、無邪気な告白が返ってきて、フェイトの頬は大いに綻んだ。

「私も、だ……」

「あ、フェイトちゃん! 人だ!」

 何とも間の悪い話である。なのはのこれまた無邪気な声で、甘い時間は煙の様に突然その姿を消してしまった。
 フェイトははっとして顔を上げる。目を凝らしてなのはの指差す方を凝視すると、すすき畑を越えた先で、人影らしきものが動いているのが見えた。ここからはまだ相当な距離があるようだが、流石長距離砲撃を得意とするなのはだけあって、かなり遠目が利くようだ。フェイト一人だったら、恐らく気づいていなかっただろう。
 フェイトは、少し飛行スピードを上げて野原を抜ける。
 すすき畑を抜けたその先は、ぽつぽつと建物がいくつか点在していて、集落のようだった。
 人影はその入口付近で立ち止まって、キョロキョロと何かの様子を窺っているようだ。その不自然な動きに、フェイトは僅かに警戒心を強める。それはただのカンではあるが、長年数々の犯罪者と関わってきた執務官としてのカンだ。

「なのはは、ちょっとここで待ってて」

 フェイトはそう言うと、空になのはを残してゆっくりと降りる。近づくにつれ、相手の姿がはっきりと見えるようになると、フェイトはぎょっとして歩を止めた。
 その人影は、黒いローブを身に纏い、フードですっぽりと顔を隠している。そのフードの奥には、煌々と光る赤い目があり、不気味さを増していた。そして、足元をよく見ると途中から透けていて、はっきりと見ることができない。隣に大型犬のような動物もいるが、こちらも同様に足先が消えていて、宙に浮いているように見える。これではまるで幽霊だ。
 フェイトが相手の様子を窺っていると、突然フードの男が指をこちらへ突き出す。その仕草で隣に佇んでいた大型犬がこちらへと駈け出してきた。

「なっ!?」

 フェイトは驚きつつも、飛び掛かってきた犬を横に躱すと、すれ違いざまに見えた牙に、犬ではなく狼だということに気付く。

「私は、時空管理局執務官、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。こちらに交戦の意思は無い、すぐに武装を解きなさい!」

 しかし、フードの男はその言葉を無視するように、再び狼をけしかけてきた。
足のない狼。漆黒の毛は夕日を浴びて尚、真っ黒なままで、まるで影が動いているようだ。フェイトは襲いくる狼を、今度はシールドを展開して受け止めようとする。

「くっ…………なっ?」

 いつもならどうという事はないはずの攻撃だが、今いる世界は魔法が使いづらいということをすっかりと忘れていた。フェイトは、シールドを上手く張る事ができず、狼に食い破られてしまい、慌てて回避行動を取る。
 しかし、次の瞬間、さらにもう一人見知らぬ人影がフェイトの視界の端に映った。

「はあぁぁぁ!」

 その人影が狼に向かってその手に持っている棒切れを、思いっきり叩き付けると、バシュっという音と共にその狼は煙と化して消滅した。


(サンプルはここまで)
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テーマ : 魔法少女リリカルなのは
ジャンル : アニメ・コミック

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プロフィール

タイヤキ

Author:タイヤキ
サークル「前に詰めて下さい」のページです。
『魔法少女リリカルなのは』と『プリキュア』ネタが多いです。

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こじょ :表紙・挿絵担当
てんぷら:ドット絵、その他

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