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【永い眠りの果てに】

皆様、ごきげんよう!
SS担当、タイヤキです。

突然ですが、転職して4月より新しい職場になりました。
せっかく作品をちょっとずつ書き始めたとこでしたが、しばらく投下できないかもしれません(汗)

ちなみに今回の作品は、勝手にレイジングハートの過去を想像して書いてみました。
解釈が独特なので、納得できないって人もいると思います。。。
そういう方は、すみません。回れ右していただけると助かりますm(_ _)m

百合要素はあまりないですが、なのフェが世界のあたりまえになっているため、記述が少なくなっています←

というわけで、以下よりどうぞ
(※百合注意)
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【永い眠りの果てに】
 
     ◇◆◇
 
 ――私は悠久の時の中、ただ眠り続けている。悪夢のような夢とともに……。
 
      ◇
 
「今日はよい誕生日となりましたね、マスター」
「にゃはは、レイジングハートもありがとうね」
 なのはは両手いっぱいのプレゼントをに目を落とすと嬉しそうに目を細めた。その中には一緒に暮らすフェイトやヴィヴィオからだけでなく、八神家の各面々からや機動六課時代の教え子たち、地球の両親・友人からの物もあり、両手で抱えきれないほどの物量となっている。その中にレイジングハート自身が贈ったプレゼントも含まれていた。
 三十歳という節目の年ということもあり、レイジングハートは初めてマスターであるなのはにプレゼントなるものを贈ってみたのだが、マスターに気に入ってもらえたことが嬉しい反面、その場から逃げ出したくなるようなむず痒い感情襲われている。こういう時は高い知性を持つインテリジェンスデバイスとして製造されたことを恨むむべきか、それとも感謝すべきか迷う所である。それでも喜ぶマスターの顔が見れて嬉しくなるので、ここはやはり感謝するべきなのだろう。
 マスターはプレゼントを自室の机に置くと、整理は明日すると言って寝室へと向かっていった。大勢でワイワイと騒いでいたため夜もすっかり更けてしまい、普段ならとっくに寝ているような時間だ。マスターにとってはかなり眠いに違いない。少しふらふらと頭が揺れている。
 マスターを見送ったレイジングハートは、ふよふよと漂いながらリビングへと戻る。リビングへ入った瞬間、先ほどまで続いていたお祭り騒ぎが一瞬眼前に広がったが、その光景はすぐに消えてしまった。しんと静まり返ったリビングのテーブルは片づけられているが、その奥のキッチンを見るとシンク内に皿やナイフ、フォークなどが煩雑に積み重ねられたままになっている。視線を部屋の隅にやると、そこには長年の友人であるバルディッシュが鎮座していた。
 レイジングハートは彼の隣に座ると、お疲れ様と言って彼を労う。その言葉を受けたバルディッシュがそちらも、と返してきた。
「今日は、良いパーティでしたね」
 珍しくいつも口数少ないバルディッシュから話しかけられ、レイジングハートは目を丸くした。といってもデバイスであるレイジングハートに目はなく本当に目が丸くなっているわけではない。もし人間だったらそういう表情をしていただろう、と自身の心情を表現しているだけにすぎない。ご存じの通りバルディッシュもデバイスである。レイジングハートが紅い球形の宝石に対し、バルディッシュは金の三角形の宝石である。
「珍しいですね、貴方の方から声をかけるなんて」
「いえ、貴女が珍しく上機嫌のようでしたので」
「……よく分かりましたね」
「何年も一緒に居るので。しかし、これだけ長く一緒に居ますが貴女が人にプレゼントを贈る所など初めて見ました」
「ええ、そうかもしれません。少し、思う所があって……」
「思う所?」
「……ええ、私の前のマスターには早々に旅立たれてしまい何も返せなかったことを今になって思い出しまして、それならと思った次第です」
 レイジングハートは呟くように言うと、昔のマスターのことを思い浮かべる。その姿も性格も今のマスターとは全く違う。長く伸ばした赤髪を後ろで一つに束ね白のツナギを着たいかにもエンジニアといった風貌のマスターは、よく笑う人だった。
「…………貴女に前のマスターが居たなんて初めて聞きました……驚きです」
「ずっと……忘れたくて、思い出さないようにしていましたから」
 レイジングハートの言葉にバルディッシュは何と答えていいか分からず困惑している様子が見て取れたが、彼女は思い切って心情を吐露してみた。
「そうだ、もし良かったら私と前のマスターの話を聞いてくれませんか、ずっとモヤモヤしていて、きっと本当は誰かに話をしたかったんだと思うのです」
 果たしてバルディッシュは何と答えるのかと、彼の様子を窺ってみる。心臓などない体なのにドキドキしている自分に少し驚いた。
「ええ、ぜひとも聞かせてください」
 バルディッシュに快諾され、レイジングハートは一気に肩の力が抜けていくのを感じる。ほっと息をつくと、おもむろに話始めた。
「あれは、今からずっと前。まだベルカが大きな戦争を起こすより更に前の頃……私が前のマスターの手によって生み出されたのはそんな頃でした。
 レイジングハートはそう語り始めた途端、堰を切ったように過去の記憶が蘇ってきた。
 
      ◇

「よし! できた!」
 活発な声が聞こえてきて、おぼろげだった意識を声の方に集中させると急に視界が開け、白のツナギを着た女性が立っているのが見えた。
「おはよう、レイジングハート! 私はカール、貴女のマスターだよ、よろしくね!」
 そう言うと彼女はにっと笑う。薄い青の瞳はとても綺麗で、にっと笑った顔は彼女の明るい性格を表しているようだ。
「おはようございます、マスター」
 レイジングハートは何が何だか分からないままにマスターだと名乗った女性に挨拶をする。すると、彼女は驚いたように目を丸くして、大きな声を上げた。
「やった! 成功だ!! ベルタ、成功だよ!!」
 マスターは隣に立っていた女性の肩を掴んで、嬉しそうにはしゃぐ。
(成功? 一体何のことでしょう……?)
「分かったから、カール。そんなに揺すらないで……頭が痛くなるわ」
「ああ、ごめんごめん」
「……もう、それにまだやる事があるのでしょ?」
「ああ、そうだった」
 私が訳の分からない状況下で目をしばたたかせていると、おもむろにマスターが私を掴み上げて手のひらに乗せた。掌の暖かな感触が伝わってくる。
「レイジングハート、私の顔は見える?」
「はい、見えています」
「うんうん、視界も良好っと」
「あの、私は一体……?」
「ああ、そっかまだ何も分からないよね、ちょっと待ってて」
 マスターはそう言うと、魔力を開放して何やら呪文を唱え始めた。彼女の足元に円形の魔法陣が浮かび上がる。すると、自分の体に何かが流れ込み始める。すぐにその正体が情報そのものだと理解した。送り込まれてくる膨大な量の情報が頭の中で浮かんでは消えていく。
「……よし、セットアップ完了っと♪」
 マスターが呪文を唱え終わると、逆立っていた髪の毛がふわりと降り、魔法陣はふっと消えた。その瞬間、自分が何者かを理解した。ボディの形状や色、備わっている機能などを理解し、自分が目の前に居るマスターたちと異なり魔導具であることを認識する。まるで赤子が急に大人になったような気分だった。
「レイジングハート、自分のことが分かる?」
「はい、私はマスターの研究のサポートのために生み出されたインテリジェンスデバイスのようです」
「そ♪ 私の研究は仮想空間における人体への影響。仮想空間での経験がどのように人に反映されるのかを調べているの。レイジングハートには、仮想空間の生成や人へのフィードバック情報の収集・解析なんかの作業を助けてもらいたいんだ」
「了解です、マスター」
「ありがと♪」
「……ところでマスター、一つ伺ってもよろしですか?」
「ん? 何?」
「自身のマニュアルを見ると、私には感情が備わっているとの記述が見受けられますが、なぜそのような機能が?」
「そりゃあ人へのフィードバックの研究っていうのは、結局の所その人が仮想空間での出来事をどう感じ、どう受け止めたかを知ることだもん。感情が分からなければ解析なんてできないじゃん」
 そっちの方が私も愛着わくしねと付け加えられ、造られてすぐに人の世の理不尽さというものを理解する羽目になった。
「あ、レイジングハート、もしかして怒った?」
「……いえ。少々、世の中の厳しさを痛感していただけです。おそらくこの身が人の体であれば、こめかみを押さえる仕草をしている所です」
 感情のせいで余計なことを考えてしまうため、いちいち処理負荷が上がってしまう事がうっとおしく、それがストレスとなって更なる負荷に繋がっている。まさに負のスパイラルというやつだ。人間は常にこんな状況に陥っているのかと考えると本当に大したものだと思う。こんな辛い事は出来るだけ避けたかったとレイジングハート痛む頭を押さえたくなった。
 
      ◇
 
「カールとの出会いは中々に刺激的なものでしたが、その後の研究の方がさらに刺激的で、まさに苦労の連続でした」
 バルディッシュは何も言わず、じっと耳を傾けている。体がゆらゆらと揺れている所を見ると、一応頷いてくれているのだろうと思い、レイジングハートは話を続ける。
「仮想空間の生成では、カールの感覚重視の指示ばかりが飛び、カールと私の感情のズレにより、なかなか研究がまとまらず、毎日のように夜を徹して議論しては、カールの親友だったベルタに二人して叱られていました」
 レイジングハートは語りながら、懐かしそうに目を細めた。あの頃も今日のパーティのように明るく暖かな笑い声が響いていた。日々激務にも関わらず楽しかったのは、カールとベルタと一緒に笑い合って日々を過ごせていたからだろう。
「……良いマスターに恵まれましたね」
「ええ、本当に」
 少しの間、しんとした静寂に包まれる。バルディッシュが昔の余韻に浸れるようにと気遣っているのかもしれないと気苦労の絶えない友人の心情を推し量る。
「……けれど、そんな楽しい時間はそう長く続きませんでした」
 
『逃げて! レイジングハート!!!』
 
 不意に聞こえたカールの叫び声に、どきりとして振り返る。けれど、振り返った先には誰も居なかった。
 マスターとの別れは突然だった。ある日、見知らぬ男たちが急に襲い掛かってきたのだ。その時のことを思い出し、レイジングハートは僅かに身震いをする。
 目が焼けるほどの熱い炎が眼前に広がり、大事な研究器具や資料がいくつも焼け爛れていく中でカールが必死に叫んでいた。研究所の隅に追い立てられた二人に逃げ場はなく、背後から聞こえる男たちの声に追いつかれるのも時間の問題であることは明白だったが、デバイスであるレイジングハートだけは、傍にある排水溝から外へと逃げることができそうだった。逃げ道を見つけたカールが愛機に向かって叫ぶ。
『逃げて! レイジングハート!!!』
『しかし、マスター! それでは……』
『いいんだ。私が死んでも…………あんたさえ生きていれば、私の研究は死なない。私の生きてきた証は残るんだ!』
『それなら! 貴女が生きていれば、もっと多くのものを残すことができるはずです!』
『私はもう逃げられない! たとえここを乗り切ってもこれから先ずっと奴らは追いかけてきていずれは捕まってしまう……その時にはもしかしたらあんたさえ奪われてしまうかもしれないんだ!』
 マスターの目の奥から意思を曲げない強い光を見て、レイジングハートは項垂れた。そうだとしても、ここで主人を見捨てて一人逃げることなどできないとレイジングハートは僅かな希望を込めて一つの提案をする。
『……マスター、一つだけこの場を乗り切る方法があります。私を杖として使い、この壁を魔力攻撃で突き破るのです』
『……それはできない』
 カールは苦い顔で答える。
『なぜ……!? 私はインテリジェンスデバイス。魔法の杖としての機能も備わっています!』
『ごめんね、レイジングハート。杖の機能は元々使うつもりじゃ無かったから、一定以上の魔力量がない人には使えないようにロックをしているの。残念ながら私の魔力量じゃ起動できない……それに例え起動できたとしても、この壁を突き破るような魔法は登録してないんだ』
『そんな……』
 レイジングハートは息をのんだ。自分自身の機能を今一度確認すると、確かに登録されている魔法は周囲を明るく照らしたり、杖の形を所有者のイメージに合わせて変形したりする程度のものしかなかった。
『おい、こっちにいたぞ!』
 燃えさかる炎の音に交じって男の声が響く。どうやら気づかれてしまったらしい。
 レイジングハートはぎりっと奥歯を食いしばると、役に立たない躰でカールをかばうように前に出る。敵の眼前でふらふらと飛び回れば、もしかしたら敵を攪乱できるかもしれない。その隙にマスターが逃げることもあるいは、そんなことを考える。
『……管理者権限によるシステムロック、デバッグモード起動』
 しかしそんなレイジングハートの覚悟をカールは拒絶した。
『マスター、何を――――』
 マスターが何かの呪文を唱えた瞬間、レイジングハートは意識を失った。意識を失う瞬間、マスターの申し訳なさそうな顔が見え、その口がごめんねと動いたような気がした。
 
「……目を覚ますと、私は研究所から数百メートル離れた草原に埋もれていました。すぐに研究所に戻りましたが、研究所は全焼、カールの姿はどこにもなく、ただ焼け爛れた瓦礫だけが広がっていました」
「攫われた可能性は?」
「それはありません。後日、殺害のニュースが流れていましたので。……カールは非常に優秀な科学者でした。その優秀さゆえに命を狙われたのだと思います」
「その後のベルカ戦争と関係が?」
「……わかりません。もしかしたらその可能性もあったのかもしれません。当時の研究を応用すれば、優秀な多くの戦士を短時間で生み出すことができたとは思います」
「……!」
 レイジングハートの言葉にバルディッシュは気づいたようだった。流石だな、とレイジングハートは改めて彼の知性の高さに関心させられる。
「貴方もお気づきのように、魔法に関しては素人だったマスターが急激に力をつけることができたのはその研究の成果です。脳内で仮想空間を生成し、そこでの経験を実体験として生身にフィードバックする。さらには現実世界での生活も並行して行える……まぁ、後者はマスターの類まれなる集中力の賜物ではありますが」
「……なるほど」
「まぁ、正確なことはわかりません。もしかしたらもっと別の理由だったのかもしれません……カールを失ったショックで深い眠りについた私には真相を解明することはできませんでした」
 そう言ってレイジングハートは息をついた。レイジングハートの脳裏にはテレビから流れる淡々としたアナウンサーの声とそのニュースを聞いて泣き叫ぶベルタの声がこだましている。そして感情などという余計な機能を載せた前の主人を酷く呪った時もあったなと当時を振り返る。あの頃の事は今思い出しても気分が悪くなって吐きそうになる。あの時ほど自壊できない自身を呪ったことはないだろう。
「……一つ、いいですか?」
 長い沈黙をバルディッシュの質問が遮った。
「何でしょう?」
「貴女は造られた当時、攻撃魔法が備わっていなかったと言いましたが本当ですか?」
 バルディッシュの信じられないという驚愕の声に、レイジングハートは苦笑いをする。出会った頃からお互いに激しい戦闘を繰り広げた挙句、特大のブレイカーを喰らった身からすれば当然の疑問だろう。あの当時からフェイトとバルディッシュのパートナーはその辺の魔導士よりもずっと強かった。その二人を倒した魔法の杖が実は攻撃魔法が使えなかったなど、とても信じられない事だろう。
「……カールを失った後、私は深い眠りの中でずっと強い後悔を抱いていました。もしあの時私に力があればカールを助けることができたのではないか……その思いが、眠っていてなお私を動かし続けていたのです。夢の中でずっと、どうすれば攻撃魔法を習得できるのか、どういう攻撃が必要なのか、とずっとシミュレーションを繰り返していました。何十年、何百年……ベルカの戦争が終わり新しい時代になるほど長い間、繰り返していたのです」
 レイジングハートの言葉に、バルディッシュは息をのむ。一体どれほどの後悔がその身を苦しめ続けていたのか、バルディッシュには静かに話すレイジングハートの心情を知ることはできそうになかった。一つだけ分かったのは、その長い長いシミュレーションの中であれほどの力を身に着けたという事だ。
「そうしている内に、今のマスターに出会ったのです。最初は魔力量こそ飛びぬけていましたが、ただそれだけの少女だと思っていました。……けれど、人を思い、デバイスである私でさえも傷つけば心配する彼女の姿にカールの姿が不思議と重なって見えたのです。再び主人を得た私は、今度こそは自分の主人を守り切ってみせる、そう強く決意しました。なので、無事に三十歳を迎えることができて本当に嬉しいのですよ」
 そう話すレイジングハートの筐体がきらりと光る。
 そんな彼女の姿にバルディッシュは眩しいものでも見るように目を細めた。
「まだまだ、これからですよ」
「ええ、分かっていますとも! マスターの幸せのためには戦闘力だけでは足りないようですしね!」
「次は一体どのような能力を得るつもりですか?」
「次は、コミュニケーション能力です……主に恋愛面の」
 そう言って、にやりと笑う。マスターにはまだまだ幸せになってもらうのだ。当面の目標は、マスターが十数年以上ずっと想っている金糸の髪のあの人と本当の意味で一緒になってもらうことなのだ。レイジングハートはぐっと顔を上げると、「貴方も協力をお願いしますね」とバルディッシュに言う。バルディッシュは頷いてくれたが、きっと伝わってないだろうなと苦笑いをした。
 これ系の話はフェイトに似て鈍い所がある。この主従は本当によく似ているが、バルディッシュだけでも話が通じやすければ、もっと我がマスターも苦労せずに済んだのにとそう思うと少しだけ目の前の朴念仁を叩きたくなるのだった。
 
(おわり)
 
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テーマ : 魔法少女リリカルなのは
ジャンル : アニメ・コミック

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