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【にこまき物語 第三話】

どうも、SS担当タイヤキです。

まだ苦情が来ていないので、更に調子に乗って続編書きました……。
もうこうなったら最後まで書ききりたいですねぇー……(汗)

……ただ、この回あたりで色々波紋があるかもしれません。
でも上げるという(笑)


と、とりあえず以下からどうぞ。
あ、用語集も更新しましたが、ネタバレを含むので読み終わってから見てください。→用語説明

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【にこまき物語 第三話】
 
「やぁぁ!!」
 
 ──ガイィィン!!
 
 激しい鍔迫り合いの音が洞窟内に響き渡る。父の仇だと語る白い羽を生やした敵は、その手に握る剣で易々とニコの斧を受け止めている。
 
 ──ガイィィン!! ガイィィン!!
 
 その実力が本物であることを証明するように二度、三度と体重の乗ったニコの斧を軽々と受け止めている。鍔迫り合いの度に、激しい音と風圧が巻き起こり、真姫は依然として座ったまま、二人の戦う姿を眺めるのが精一杯だった。
 
「ふっ……とても人間とは思えぬ攻撃力だ」
 
「そりゃどーも!」
 
「流石、我が父を葬っただけのことはある」
 
「ふん……あんたの父親なんか知らないわ……よっ!」
 
 ニコは地面を思いっきり蹴り、敵の頭上から思いっきり斧を振り下ろす。しかし、敵は剣を斜めに構え、上手く衝撃を受け流してニコの攻撃をいなす。
 まるでのれんを相手にしているような感覚に、ニコは少し苛立ちを感じた。防御ごと吹き飛ばす攻撃が得意なニコにとって、攻撃を受け流すタイプの敵とは相性はあまり良くないようだ。
 
「どれ……では、そろそろこちらからも攻撃するとしよう……」
 
 敵はそう言うと、背中の翼を広げて飛び上がり、ニコから大きく離れる。ニコは本能的に遠距離攻撃が来ることを察知して、急いで真姫を庇うように彼女の前に立つ。
 その様子を上空から見ていた敵は、何かに気づいたように大きく口を歪ませて笑った。
 
「ふっ、その小娘を護りながら我が攻撃を防ぎきれるかな? ──Feather's deadly sins!」
 
 掛け声と共に、白い羽が一気に漆黒に染まる。そして次の瞬間、無数の羽根が一斉にニコ達を目がけて飛んでくる。その羽根のスピードは恐るべきもので、真姫が敵の異変に気づいた時にはすでに無数の羽根が1メートル前まで迫っていた。
 
 ──逃げれない。
 
 そう思った瞬間に、真姫は恐怖のあまり両目をギュッと閉じて、両手で頭を抱える。
 
 ドッドッドッドッ、と羽根が地面に突き刺さる音が真姫の耳を刺激する。間近に聞こえる音に真姫は体を強張らせて身構える。
 ……しかし、いつまで経っても体に痛みが走る事は無かった。そっと目を開けると、地面が見えなくなる程、辺り一面が漆黒に塗り替わっているにも関わらず、自分の周りだけぽっかりと切り抜かれたように羽が避けていた。
 
 ギギギギギィン!
 
 真姫は、鋭い金属音に気づいてニコの方を見上げる。そこには斧を両手で持ち、扇風機のように振り回しているニコの姿があった。
 目では全く追うことが出来ない速度で斧を回転させるニコの後ろ姿を真姫は茫然と眺める。
 
「──くっ! ならば、これはどうだ!!」
 
 悪魔はそう叫ぶと、両手を胸の前で合わせてしっかりと握る。
 
「我、純然たる王にして、汝の主なり。今、その巨大な躰にて敵をうち滅ぼせ……Giant darkness ball!」
 
 悪魔は長い呪文を唱え終えると、握っていた手の隙間から紫色の光が漏れ始めた。ゆっくりと握っている両手を離すと、そこには小さなローズ色の球体が浮いていた。
 真姫は、どんな攻撃がくるのか分からず、ニコの後でギュッと杖を握って身構える。
 悪魔はギロリとニコ達を睨みつけると、そのローズ色の球体を投げつけてきた。するとその球体は突然、爆弾のように洞窟内を埋め尽くそうと膨張し始めた。
 その膨張スピードは凄まじく、目を閉じる時間すらなかった。真姫は押し寄せてくる紫色の壁をただ眺めることしかできない。
 
 ──ズバン!
 
 しかし、またもやその衝撃が真姫に伝わることは無かった。
 ニコが横一線に斧を振り払うと、敵の魔法は真っ二つに割れてしまった。真姫は驚いて見開いた目でニコを見つめる。斧を振り切った彼女のツインテールはそよ風になびいているかのごとく優雅だった。
 
「──バカな!? この魔法を切り裂いただと!?」
 
 全く予想していなかったのであろう。悪魔は宙に浮いたまま先ほどまでの余裕に満ちた表情から驚愕した表情に変わっている。
 本来、自然現象を操る魔法以外は、物理作用が働かないというのがこの世界の常識で、今のニコの行動はその物理法則を全く無視したものだった。
 一般的には、先程のような魔法に対抗するには、こちらも同程度の威力を持つ反対魔法を使って相殺するしかない。
 
「──フン! このニコ様にかかれば、こんなのヨユーよ、ヨユー」
 
 なぜ敵があれほど驚いているのか分かって無さそうなニコの発言に、真姫は耳を疑った。恐らく、それは敵も同じだろう。
 
「ヨユーって……物理法則的にありえないんですけど?」
 
 真姫は、あまりの出来事に思わず反論が口をついて出てきてしまった。
 
「え? そうなの?」
 
 真姫の言葉に、ニコはきょとんとした表情で後ろを振り向く。
 
「そうか、貴様のその斧……さては聖遺物か?」
 
 敵のその発言に真姫はハッとして、魔法を相殺する方法がもう一つある事を思い出す。
 それは、魔力を帯びている武器を使用すること。
 世の中には、神々が使用した武器や、過去の偉人が使った武器があり、それらは皆特別な魔力を秘めている。聖遺物もその一つだ。
 しかし、二人の考えとは裏腹にニコの口から発せられた事実は、到底信じられるものでは無かった。
 
「はぁ? セイイブツ? 何ソレ、この斧は、近くの町から持ってきたものよ」
 
 ニコは疑心に満ちた瞳で敵を睨みつける。ニコからすると、敵が嘘をついて騙そうとしていると思っているのだろう。
 
「え? ニコちゃん、ソレ本当にノギザカから持ってきたの?」
 
「そうよ、ほらここに真姫ちゃんが書いてくれたサインがあるでしょ?」
 
 そこには、この町を出ていくニコへのお守り代わりに書いた真姫のサインがあった。
 
 ────ずっとこの斧を使ってくれてたんだ。
 
 真姫はありえない事実を立て続けに突き付けられて、嬉しさと驚きで頭の中は混乱しきっていたが、ニコの純粋さに泣きそうになった。
 
「ふ……ふざけやがって!」
 
 つい先ほどまでは余裕を見せていた悪魔だが、今は苛立ちを露わにしていた。バッサバッサと背中の翼を忙しくバタつかせながら、二人を見下ろしている。
 
「全く……ニコちゃんはいっつもトンデモないんだから」
 
 先程まで足に力が入らなかった真姫だが、ニコの姿に勇気づけられて、ようやく立ち上がった。一歩前に踏み出しニコの隣に並ぶと、ギュッと杖を握って、空に浮いている悪魔に向き直った。
 隣でその様子を見ていたニコは、嬉しそうに微笑を浮かべると、真姫に倣うように悪魔の方に向き直る。
 二人の様子に、空に浮いている敵は分が悪いと感じたのか、少し腰が引けているように見える。
 
「さぁ! 観念しなさい!」
 
「ぐぐぐ……」
 
 ニコの気迫のこもった声に気圧されて、悪魔は低い声で唸った。
 
「さぁ、行こう! 真姫ちゃん!」
 
 そう言うと、ニコは思いっきり敵に向かって駆けだす。真姫は、大きく頷くと詠唱を開始した。
 
「火の精霊よ、我が魂を贄とし、その力を解放せよ……メガ・フレア!」
 
 真姫は持てる全ての力を振り絞り大きな火の玉を作り出し、それを空に浮いたままの敵に目がけて飛ばした。クレイジードックの時に比べ数倍も大きな火の玉は、ゴゥッという音と共に勢いよく敵に向かって飛んでいく。
 ニコに気を取られていた悪魔は驚いた表情で、慌てて両手を前に突出してその攻撃を受け止める。
 
「──スキあり!」
 
 ニコは悪魔の側面に回り込み、強く地面を蹴ってジャンプする。
 火の玉を両手で受け止めている悪魔は、目だけ横に動かしてニコの方を見るが、身動きまでは取れそうにない。
 
「食らいなさい! ニコ・ハンマー!!」
 
 ニコは敵の側面までジャンプすると斧を両手で握り、独楽のように周りながら横なぎの一閃を放った。
 
「くっ!」
 
 
 ────ドオン、と激しい爆発音が鳴り、上空で煙が立ち込める。
 
「やった!」
 
 その様子を下から見ていた真姫は、勝利を確信して思わずガッツポーズを取る。ニコも手ごたえを感じたのか、真姫の方に親指をグッと立てて、サインを送っている。
 
 ──ニュルン
 
 しかし次の瞬間、地面を覆っていた黒い羽根が突然液状のようにドロッと溶けたと思ったら、真姫に向かって襲いかかってきた。
 
「──きゃあああ!」
 
 真姫は為す術もなく、その黒い塊に全身を縛られてしまい、悲鳴を上げる。
 黒い塊に縛られて、真姫は完全に身動きが取れなくなった。
 
「!? 真姫ちゃん!」
 
 地面に着地したと同時に上がった真姫の悲鳴に、ニコは再び全身の毛が逆立つ感覚に陥った。慌てて真姫の方を見ると、そこには全身を黒いロープのようなもので縛られて、浮いている真姫の姿があった。
 
「くっくっく……油断したな、勇者よ」
 
 上空の煙が晴れた所に、まだ悪魔は浮かんでいた。しかし、ダメージは相当あったようで全身傷だらけで、綺麗な羽も今は先の方が少し焦げていた。
 
「アンタ! この子を離しなさい! さもないと、容赦しないわよ!!」
 
 ニコは上空の敵を睨みつけて、大声を張り上げた。ニコの声にビリビリと大気が震える。
 しかし、敵は平然とニコを見下ろし、
 
「この娘が無事で済むかどうかは、貴様の行動次第だ」
 
「私の……行動?」
 
「そうだ、この娘を助けて欲しければ、貴様が代わりに捕虜となってもらおう」
 
「────くっ」
 
「さあ、どうする? あまり時間はないぞ」
 
 悪魔はそう言うと、少しずつ真姫を縛る力を強くしていく。
 
「う……ううう…………」
 
「真姫ちゃん!」
 
 真姫が急に苦しそうな声を上げ、ニコは慌てた。
 
 ニコの叫びが耳に入り、真姫は視線を横にずらす。そこには、今まで見たことが無い程焦っているニコの姿があった。
 
 ──真姫は考える。
 この場合、どうするべきなのだろう。全力で助けてと叫ぶ? 自己犠牲の精神で私のことは良いから敵を倒してと言う?
 
 どちらも違う気がする──私は……。
 
「10……9……8……」
 
 なかなか答えを出さないニコに痺れを切らしたように、悪魔はカウントダウンを始める。ニコはカウントが下がっていくにつれて、底なし沼に沈んでいくような感覚を味わっていた。
 
「ニコちゃん!」
 
 すると、突然真姫が声を張り上げ、ハッとしてニコはその声の方へ振り向いた。悪魔のカウントダウンはもう『5』を切っている。
 
「…………負けないで!」
 
 その声は、ニコの血管から全身に流れ込んでいく。ニコは覚悟を決めて、敵を見据えるとグッと足に力を入れる。
 
「────────────きゃあああああああ!」
 
 その悲鳴は、今まさに飛び出そうとするニコを制止させるには十分すぎる効果を発揮した。ニコは全身から冷や汗が流れ出し、先程まで感じていた力はスーッと背中から抜けていく。
 
 ──カラン
 
「……もうやめて! この娘を傷つけないで! 私が身代わりになるから!!」
 
 ニコは斧を捨て、泣きじゃくる様に膝をついて悪魔に懇願していた。それを聞いた悪魔は、大きく口を歪ませて勝ち誇ったような顔に変わる。
 真姫を縛っていた黒い塊は、ズズっと音を立てながら真姫から剥がれ、ニコの方に向かって行く。
 
「……一つだけ、教えなさいよ……」
 
 ニコは徐々に浸食されていく中で口を開いた。
 
「なんだ?」
 
「……アンタの父親って誰よ? アンタは一体……」
 
「ふ……フハハハハ! 我が名はベリアル。魔王サタンを父に持つ魔界の王子だ! ……おっと、今は王子ではなく王だったか」
 
 尚も高笑いを続けるベリアルに対して、ニコはギロリと据わった目つきで睨むと
 
「──ふん、これで勝ったと思わないことね! 私はまだ負けてないんだからね!!」
 
 と言い放った。
 それと同時に、黒い塊にニコは顔まで覆われて、ついに石像のように固められてしまった。
 
「フフフ……ハハハ! 俺は、この力で世界を手に入れる!!」
 
 ベリアルの叫び声に呼応するように、ニコの石像がフワッと浮いて、ベリアルの隣まで飛んでいく。ベリアルは、石像となったニコの姿を満足そうに眺めると、更なる上空へ消えて行った。
 薄れゆく意識の中、魔王の高笑いだけがグルグルと真姫の頭の中を回っていた。
 遠ざかるニコの姿を眺めながら…………。
 
 
   ◇
 
 
 這うように洞窟を出ると、すっかり辺りは暗くなっており、雨が降っていた。真姫は、薄れゆく意識を辛うじて繋ぎ止め、一歩ずつ前に進んで歩いていく。まるで真姫の心情を表しているかのように次第に強くなる雨に、どんどん視界が悪くなっていった。
 それでもどうにか町の入口まで辿りついた真姫は、足を引きずるように自宅に向かって歩いて行く。
 
「──真姫!」
 
 入口の門を潜るとすぐに、母の声に呼び止められた。たった数時間ぶりに聞いた声のはずなのに、まるで数年ぶりに聞いたような懐かしさを覚えた。
 真姫は重い体に鞭打って、駆け寄ってくる母親の方を向く。
 
「真姫! 暗くなっても帰ってこないから、心配したわ……」
 
「……ママ、ごめんなさい……」
 
 母親にギュッと抱きしめられ、その温もりに真姫は安心する。
 
「一体、どこに行ってたの?」
 
 しかし、母のその言葉によって真姫は一気に現実に引き戻された。ずんと重たい石が胃の中にあるような気分になる。
 
「ママ……ニコちゃんが……ニコちゃんが…………」
 
 真姫は嗚咽が混じりながらも、何とかして言葉を紡ごうと口を開く。しかし、真姫の口からは同じ言葉が繰り返されるだけだった。
 
「ニコちゃん? ニコちゃんって、昔この町にいたニコちゃん?」
 
 母の質問に、真姫は何度も首を縦に振って頷く。
 
「……ニコちゃんが、どうしたの?」
 
 ポンポンと小さな子供をあやすように、母親は真姫の背中を叩いて、落ち着かせようとした。
 
「ひっく……ニコちゃんが……魔王に攫われたの……」
 
 真姫の発言は、母親に多大な衝撃を与えていた。思わず、真姫の背中を叩いていた手が止まる。
 
「……だから、助けなきゃ……助けに……行かなきゃ…………」
 
 真姫は最後の力を振り絞ってそこまで口にすると、母の腕の中で意識を失った。
 母親は時が止まったようにしばらく身動き一つしなかった。
 
 ザーという雨音だけが真姫達の周りを満たしていた────。
 
 
(つづく)
 
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