【なのはさん生誕祭】
どうも、SS担当タイヤキです。
一日遅れてしまいましたが、3/15はなのはさんの誕生日ということでSSを投下しますー!
……最近、遅れることがデフォルトになってきた。。。ダメですね
そして、年末から今までまともにSSを投下できていなかったという。。。
今回も突貫で作ったので、クオリティがアレですが……(汗
ま、まぁ、とりあえず大人なのはさんの誕生日ネタです。(なのフェイあり)
以下からどうぞ!(※百合注意)
一日遅れてしまいましたが、3/15はなのはさんの誕生日ということでSSを投下しますー!
……最近、遅れることがデフォルトになってきた。。。ダメですね
そして、年末から今までまともにSSを投下できていなかったという。。。
今回も突貫で作ったので、クオリティがアレですが……(汗
ま、まぁ、とりあえず大人なのはさんの誕生日ネタです。(なのフェイあり)
以下からどうぞ!(※百合注意)
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【なのはさん生誕祭】
「ヴィヴィオ、こういうのはどうかな?」
「お~! フェイトママ、さすがぁ~!」
「でしょー! えへへ」
二人がリビングでコソコソしている姿を、私はキッチンから眺めている。あれで隠しているつもりなのだろうか。時々私の名前が聞こえてくるところを見ると、明日の事を相談しているのだろう。
──明日は私の誕生日だ。
二人が何かしようとしてくれている事が嬉しくて、私はあえて素知らぬ顔で皿を洗う。
「なのはママ、明日は早く帰ってくる?」
ヴィヴィオはトテテという擬音がぴったりな歩き方でやってくると、おもむろに質問をぶつけてきた。その瞳が眩しいくらい輝いていて、彼女の愛らしさに思わず頬が緩む。
「うーん、明日は特に夜勤もないし、早く帰ってくるよー♪」
「そっか! 分かったぁ!」
私の言葉に、元気のよく返事するとヴィヴィオは慌ただしくフェイトちゃんの元へと駆けて行った。
──本当にこれで隠せているつもりなのかな?
◇
翌日、仕事を終えて家に帰ると、玄関の敷居までヴィヴィオが迎えに来てくれた。その歩き方はやはりトテテという擬音が似合う。
「おかえりなさい、なのはママ!」
「ただいま、ヴィヴィオ」
「エヘヘ……あ! 鞄持ってあげる!」
ヴィヴィオはそう言うと、有無を言わさぬ速さで私の手から鞄を奪う。
「さ、早く、上がって上がって!」
いつも以上に俊敏なヴィヴィオの動きに戸惑いながらも、私は「うん」と短く答えて靴を脱ぐ。
すっかり主導権を相手に握られた私は、そのままグイグイと背中を押されながらリビングへと向かった。
「なのは! ……誕生日おめでとう~♪」
「なのはママ! 誕生日おめでとう~♪」
「きゃっ」
パンというクラッカーの音が部屋に鳴り響き、私は驚きの声を上げる。顔を上げるとテーブルには豪華な料理の数々が広がっている。二人でこれだけの料理を用意したのだろうか……ピザやシーザーサラダ、柑橘系の果物も並べられている。
「うわ~♪ 凄い量の料理だけど、これ二人で作ったの?」
「そうだよ、なのはママ!!」
えへんと胸を突き出して、自慢げな顔をしてヴィヴィオが答える。そんなヴィヴィオの頭にそっと手を乗せて、フェイトがこちらに笑顔を向ける。その笑顔が眩しくて、私は目を細めた。
整った顔のフェイトが見せる笑顔は、まるで一枚の絵画のように綺麗で、いつ見ても惚れ惚れする。
「ありがとう、ヴィヴィオ……フェイトちゃんも♪」
ヴィヴィオの目線のまで屈むと、娘の頭に載せられている手の上に自分の掌を重ねる。嬉しそうに頬を緩ませる愛娘の姿に、私は胸の奥が暖かくなった。
「さ、なのは。主賓はこちらへどうぞ」
フェイトはスルリとヴィヴィオの頭と私の手に挟まれている自身の手を抜くと、テーブルの中央席になのはをエスコートする。久しぶりに聞く、フェイトの低い声にドキッとしたが、私は小さなプライドからそれを悟られないように、平然を装う。
フェイトが案内した席は、いわゆる”お誕生日席”と呼ばれる席だった。私が座りやすいようにと、椅子を引いてくれる仕草は、まるで執事のようで、少しお姫様気分になってしまう。
「ありがとう、フェイトちゃん!」
ドキドキさせられっぱなしなのが悔しくて、私は負けじと満面の笑みを彼女に贈る。いつもなら、それで彼女の心を掴めるのだが、今日のフェイトちゃんは一味違うようで、キリッとした表情は崩れなかった。
「さ、ヴィヴィオも座って」
「はーい!」
いつもの食卓。でも今日は少し特別で、私はまるでレストランで食事をしているような高揚感を私は覚えていた────。
◇
「なのはママ! あのね、これ!」
少し皆の手が止まってきた頃、ヴィヴィオが突然こちらへ駆け寄ってきた。ズイッと差し出されたものは、淡いピンクの水玉模様の包装紙で包まれていて、開口部を緑のリボンで結んでいる。
私は訳も分からず、とりあえずその可愛らしい袋を受け取った。カサッという軽い音がして、中身がクッキーのようなものであると想像する。
「ありがとう、ヴィヴィオ……空けてもいい?」
「う、うん……」
ヴィヴィオは私が袋の中身を確認するのを真剣な眼差しで見つめている。────中身は想像通りクッキーだった。
よく見ると、一つ一つ大きさが違っていて、中には少し形が崩れているものもある。
「これ……もしかして、手作りなの?」
私の質問に、ヴィヴィオは心配そうな顔のままコクンと頷く。
元々しっかりした子だと思っているが、まさか初等科二年生のヴィヴィオがクッキーまで作れるようになっていたとに私は驚きを隠せなかった。
「ヴィヴィオ、こんな事まで出来るようになってたなんて……凄いよ……嬉しい…………ありがとう、ヴィヴィオ♪」
私の言葉を聞いたヴィヴィオは安堵のため息をついて「なのはママほど上手くできなかったけど」と申し訳なさそうな顔をする。そんな娘の姿に、このクッキーをどれほど一生懸命作ってくれたのか伝わってきて、私は我が子をギュッと抱きしめた。
「────────なのは!」
そんな良い雰囲気を壊すように名前を呼ばれ、私はフェイトちゃんの方を見る。そこには、カッコいいフェイトちゃんではなく、いつもの彼女の姿があった。
「どうしたの、フェイトちゃん?」
「あのね、なのは! 私もね、なのはに渡したいものがあるんだ!」
フェイトちゃんはモジモジと恥ずかしそうに身をくねらせながらも、おもむろに胸ポケットから小さな箱を取り出した。私は、その箱を見て何となく嫌な予感がしていた。
「フェイトちゃん……一応聞くけど、それは何?」
「あのね、なのはに合うかなって思って……」
そう言って、フェイトちゃんが開けた箱の中には綺麗なリングが収まっていた。リングのトップに光り輝く宝石がある。この光り方はダイヤモンドに違いない。
「……フェイトちゃん……」
私は、それを見てサーッと頭から血の気が引くのを感じていた。しかし、フェイトちゃんは嬉しすぎて言葉がでないのだと勘違いしたようで、満面の笑みを浮かべている。
「……バカ──────────!!」
隣の家に聞こえてしまうほどの大声を私はフェイトちゃんにぶつける。予想外の事態に、フェイトちゃんもヴィヴィオも蝋人形のようにピタリと動きを止めてしまった。
「フェイトちゃん、そこに座りなさい!」
「は、はい──────!!」
フェイトちゃんは飛び上がりそうになりながら、慌ててその場に正座する。その表情は、困惑の色を濃く映している。
「いい? フェイトちゃん、無駄遣いはダメって前にも言ったでしょ!」
「む、無駄遣いじゃないもん………………」
「無駄遣いです!」
「な!? なのはの誕生日は一年に一回しかないんだよ? そんな大事な日なんだから、全然無駄じゃない!」
「そう言ってフェイトちゃんは、クリスマスとかバレンタインとかでも同じことしてるんだから、一年に一回じゃないじゃない!」
「ぐぅ……」
フェイトちゃんはそれでも納得していないようで、必死に言い訳を考えている。……これは、再教育が必要そうだ。私は、心を鬼にしてキュッと唇を結んで覚悟を決めた。
◇
────ピンポーン
私とフェイトちゃんの言い争いが続いている中、のんびりとした玄関のチャイムがリビングに鳴り響いた。
「あ! 私見てくる!!」
この場から何とか逃げたいヴィヴィオが、チャンスとばかりに玄関に向かって駆けだす。流石に、ヴィヴィオ一人に対応させられないので、私は慌てて後を追いかける。
「あ! はやてさん!」
「やっほー、ヴィヴィオ♪ ママ達はおらへんの?」
「あれ? はやてちゃん!? どうしたのこんな時間に……」
「あ! ちょうど良かった! なのはちゃん、誕生日おめでとうな♪」
「え~~~! まさか、それを言いにわざわざ来てくれたの!? わ~! ありがとう、はやてちゃん♪」
「むっふっふ~、今日は更にすぺしゃるゲストや!」
「…………よう、なのは」
はやてちゃんがさっと横に移動すると、そこには赤髪のおさげをした女の子がぶっきらぼうな表情で立っていた。
「ヴィータちゃん!?」
「ん、まぁ私だって別に同僚の誕生日ぐらい祝ってやらねぇこともねぇ……」
「ヴィータちゃん……」
思わぬ来客に胸が熱くなる。しかし、客人を外に立たせっぱなしにしている事に気づいて、慌てて家の中に招き入れた。
「でも、まさかヴィータちゃんまでお祝いしてくれるなんて……ありがとう!」
リビングへ向かう途中で、私は素直な気持ちを二人に告げる。ヴィータちゃんも満更でもない表情で「おう」とだけ応えてくれた。はやてちゃんは、いつもの優しい笑顔を向けてくれていた。
「あれ? はやて、ヴィータ?」
「お邪魔しますー、フェイトちゃん……ってあれ?」
はやては、リビングについてすぐにこの場の異常な雰囲気に気づいたようで、周囲をぐるりと見渡すと、何か納得したように小さく一度だけ頷いた。
「よう、フェイト。元気そうだな」
ヴィータちゃんは気づいて無さそうで、フェイトちゃんに普通に話しかけている。
フェイトちゃんとの言い争いは、今日の所はここまでかなと思っていると、はやてちゃんがポンと私の肩に手を置くと、フェイトちゃんに向かって、
「フェイトちゃん、またそんな高価な物を贈って……ホンマ、成長せえへんなぁ~」
「だって、はやて……」
「どうせ、フェイトちゃんの事やらか、一年に一度だからとか言うたんやろ?」
「ぐ…………」
フェイトは痛い所をはやてに突かれ、言葉に詰まる。その隙をついてはやてちゃんは更に畳みかける。
「そんなんやったら、いつかなのはちゃんに見放されるよ!」
「それは困る~~!」
「じゃあ、ちゃんと反省するんやで?」
「………………うん」
渋々といった感じでフェイトちゃんが頷いた。相変わらずこういう交渉では本当に頼りになるなぁ、と私は感心してはやてちゃんの方を見る。はやてちゃんは、私の視線に気づくとパチリとウィンクを返してきた。
「なのはちゃん、これでエエかな?」
「うん、ありがと♪」
「ホントにフェイトの奴もこりねぇなぁ~」
「ううう……」
「あれ? ヴィータだって、未だにアイスの食べ過ぎで時々お腹壊してるやん、それと一緒やで♪」
「あー、もう! はやて、それは秘密だって……」
「プ、アハハハハ!」
私はそんな皆のやり取りが、可笑しくて、温かくて、自然と笑いが込み上げていた。
◇
この後、はやてちゃんとヴィータちゃんもプレゼントをくれた。ヴィータちゃんは少し恥ずかしそうにしていたのが可愛かった。明日から早速からかおうかなと、少し邪な事を考えてしまう。
そして、今は皆でのんびり談笑中。
────ピリリリ……
けたたましい電子音が私への通信が入った事を知らせた。この時間に通信は職場からの呼び出しが多いこともあり、フェイトちゃんとヴィヴィオの表情が硬くなったのに気付いた。
ゆっくりと通知パネルを見ると、そこには昔の教え子の名前が表示されていた。私は、小さく息を吐いて無意識に入っていた肩の力を抜くと、通話ボタンを押す。
「あ! なのはさん、お久しぶりです! スバルです!! あ、ティアナも隣にいます」
「お久しぶりです、なのはさん」
「うん、久しぶりスバル、ティアナ♪ どうしたのこんな時間に?」
「はい、今日なのはさんが誕生日だと聞いたので、電話しちゃいました♪」
「すみません、なのはさん。もう遅いから明日にしなさいって言ったんですけど……」
「そうなんだ、二人ともありがとう♪」
私は、二人の教え子の優しさに胸が熱くなった。
「……なのはさん……」
「……ティアナ?」
「誕生日、おめでとうございます……」
「うん、ありがとう」
少し低いトーンで言われて、つられて私の声も少し低くなる。
「……私が今ここで頑張れているのは、なのはさんの教えがあったからだと思っています」
「そんなことない、それはティアナの力だから自信持って良いと思うな」
私の言葉に、ティアナはゆっくり首を左右に振る。
「なのはさん……今でも辛い事は沢山あります。そういう時に思い出すのは、バカスバルの事となのはさんの事……なのはさんに教わった魔法は今でも私を助けてくれていて……だから、いつかこの魔法で今度は私が多くの人を助けていきたいと思います」
「ティアナ……」
「だから、本来はそんな資格ないかもしれないんですけど……今日は、なのはさんの誕生日を祝わせてください!」
「……もう、ティアナは真面目だなぁ」
ティアナの言葉は、ずっと胸の奥に入り込む。そこには不安や恐怖で小さくなって震えている自分が居て、温かく、真っ直ぐな言葉に照らされる。
気づけば、私は瞳から涙を流していた。いつの間にか、両手を愛娘と最愛の人に握られている。
「もー……、どうしてこのタイミングで……皆して私を泣かせにかかるかな」
そう呟いてしゃがみ込む。
手を繋いでいるヴィヴィオとフェイトちゃんも一緒にしゃがみ込んでくれた。そのさりげない優しさに、私は嬉しくて、嬉しくて涙が止まらなくなってしまう。
「ヴィヴィオ、フェイトちゃん……愛してる……ありがとう」
そう言って、人目もはばからず頬と唇にキスを落とした。
「……みんな、ありがとう……愛してるよ」
涙でしわがれた声でそれだけを伝える。泣いている顔を見られたくないから俯いたまま。
背中から優しい視線を感じながら、私はこの幸せな空間に身を委ねていた────。
(おわり)
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【なのはさん生誕祭】
「ヴィヴィオ、こういうのはどうかな?」
「お~! フェイトママ、さすがぁ~!」
「でしょー! えへへ」
二人がリビングでコソコソしている姿を、私はキッチンから眺めている。あれで隠しているつもりなのだろうか。時々私の名前が聞こえてくるところを見ると、明日の事を相談しているのだろう。
──明日は私の誕生日だ。
二人が何かしようとしてくれている事が嬉しくて、私はあえて素知らぬ顔で皿を洗う。
「なのはママ、明日は早く帰ってくる?」
ヴィヴィオはトテテという擬音がぴったりな歩き方でやってくると、おもむろに質問をぶつけてきた。その瞳が眩しいくらい輝いていて、彼女の愛らしさに思わず頬が緩む。
「うーん、明日は特に夜勤もないし、早く帰ってくるよー♪」
「そっか! 分かったぁ!」
私の言葉に、元気のよく返事するとヴィヴィオは慌ただしくフェイトちゃんの元へと駆けて行った。
──本当にこれで隠せているつもりなのかな?
◇
翌日、仕事を終えて家に帰ると、玄関の敷居までヴィヴィオが迎えに来てくれた。その歩き方はやはりトテテという擬音が似合う。
「おかえりなさい、なのはママ!」
「ただいま、ヴィヴィオ」
「エヘヘ……あ! 鞄持ってあげる!」
ヴィヴィオはそう言うと、有無を言わさぬ速さで私の手から鞄を奪う。
「さ、早く、上がって上がって!」
いつも以上に俊敏なヴィヴィオの動きに戸惑いながらも、私は「うん」と短く答えて靴を脱ぐ。
すっかり主導権を相手に握られた私は、そのままグイグイと背中を押されながらリビングへと向かった。
「なのは! ……誕生日おめでとう~♪」
「なのはママ! 誕生日おめでとう~♪」
「きゃっ」
パンというクラッカーの音が部屋に鳴り響き、私は驚きの声を上げる。顔を上げるとテーブルには豪華な料理の数々が広がっている。二人でこれだけの料理を用意したのだろうか……ピザやシーザーサラダ、柑橘系の果物も並べられている。
「うわ~♪ 凄い量の料理だけど、これ二人で作ったの?」
「そうだよ、なのはママ!!」
えへんと胸を突き出して、自慢げな顔をしてヴィヴィオが答える。そんなヴィヴィオの頭にそっと手を乗せて、フェイトがこちらに笑顔を向ける。その笑顔が眩しくて、私は目を細めた。
整った顔のフェイトが見せる笑顔は、まるで一枚の絵画のように綺麗で、いつ見ても惚れ惚れする。
「ありがとう、ヴィヴィオ……フェイトちゃんも♪」
ヴィヴィオの目線のまで屈むと、娘の頭に載せられている手の上に自分の掌を重ねる。嬉しそうに頬を緩ませる愛娘の姿に、私は胸の奥が暖かくなった。
「さ、なのは。主賓はこちらへどうぞ」
フェイトはスルリとヴィヴィオの頭と私の手に挟まれている自身の手を抜くと、テーブルの中央席になのはをエスコートする。久しぶりに聞く、フェイトの低い声にドキッとしたが、私は小さなプライドからそれを悟られないように、平然を装う。
フェイトが案内した席は、いわゆる”お誕生日席”と呼ばれる席だった。私が座りやすいようにと、椅子を引いてくれる仕草は、まるで執事のようで、少しお姫様気分になってしまう。
「ありがとう、フェイトちゃん!」
ドキドキさせられっぱなしなのが悔しくて、私は負けじと満面の笑みを彼女に贈る。いつもなら、それで彼女の心を掴めるのだが、今日のフェイトちゃんは一味違うようで、キリッとした表情は崩れなかった。
「さ、ヴィヴィオも座って」
「はーい!」
いつもの食卓。でも今日は少し特別で、私はまるでレストランで食事をしているような高揚感を私は覚えていた────。
◇
「なのはママ! あのね、これ!」
少し皆の手が止まってきた頃、ヴィヴィオが突然こちらへ駆け寄ってきた。ズイッと差し出されたものは、淡いピンクの水玉模様の包装紙で包まれていて、開口部を緑のリボンで結んでいる。
私は訳も分からず、とりあえずその可愛らしい袋を受け取った。カサッという軽い音がして、中身がクッキーのようなものであると想像する。
「ありがとう、ヴィヴィオ……空けてもいい?」
「う、うん……」
ヴィヴィオは私が袋の中身を確認するのを真剣な眼差しで見つめている。────中身は想像通りクッキーだった。
よく見ると、一つ一つ大きさが違っていて、中には少し形が崩れているものもある。
「これ……もしかして、手作りなの?」
私の質問に、ヴィヴィオは心配そうな顔のままコクンと頷く。
元々しっかりした子だと思っているが、まさか初等科二年生のヴィヴィオがクッキーまで作れるようになっていたとに私は驚きを隠せなかった。
「ヴィヴィオ、こんな事まで出来るようになってたなんて……凄いよ……嬉しい…………ありがとう、ヴィヴィオ♪」
私の言葉を聞いたヴィヴィオは安堵のため息をついて「なのはママほど上手くできなかったけど」と申し訳なさそうな顔をする。そんな娘の姿に、このクッキーをどれほど一生懸命作ってくれたのか伝わってきて、私は我が子をギュッと抱きしめた。
「────────なのは!」
そんな良い雰囲気を壊すように名前を呼ばれ、私はフェイトちゃんの方を見る。そこには、カッコいいフェイトちゃんではなく、いつもの彼女の姿があった。
「どうしたの、フェイトちゃん?」
「あのね、なのは! 私もね、なのはに渡したいものがあるんだ!」
フェイトちゃんはモジモジと恥ずかしそうに身をくねらせながらも、おもむろに胸ポケットから小さな箱を取り出した。私は、その箱を見て何となく嫌な予感がしていた。
「フェイトちゃん……一応聞くけど、それは何?」
「あのね、なのはに合うかなって思って……」
そう言って、フェイトちゃんが開けた箱の中には綺麗なリングが収まっていた。リングのトップに光り輝く宝石がある。この光り方はダイヤモンドに違いない。
「……フェイトちゃん……」
私は、それを見てサーッと頭から血の気が引くのを感じていた。しかし、フェイトちゃんは嬉しすぎて言葉がでないのだと勘違いしたようで、満面の笑みを浮かべている。
「……バカ──────────!!」
隣の家に聞こえてしまうほどの大声を私はフェイトちゃんにぶつける。予想外の事態に、フェイトちゃんもヴィヴィオも蝋人形のようにピタリと動きを止めてしまった。
「フェイトちゃん、そこに座りなさい!」
「は、はい──────!!」
フェイトちゃんは飛び上がりそうになりながら、慌ててその場に正座する。その表情は、困惑の色を濃く映している。
「いい? フェイトちゃん、無駄遣いはダメって前にも言ったでしょ!」
「む、無駄遣いじゃないもん………………」
「無駄遣いです!」
「な!? なのはの誕生日は一年に一回しかないんだよ? そんな大事な日なんだから、全然無駄じゃない!」
「そう言ってフェイトちゃんは、クリスマスとかバレンタインとかでも同じことしてるんだから、一年に一回じゃないじゃない!」
「ぐぅ……」
フェイトちゃんはそれでも納得していないようで、必死に言い訳を考えている。……これは、再教育が必要そうだ。私は、心を鬼にしてキュッと唇を結んで覚悟を決めた。
◇
────ピンポーン
私とフェイトちゃんの言い争いが続いている中、のんびりとした玄関のチャイムがリビングに鳴り響いた。
「あ! 私見てくる!!」
この場から何とか逃げたいヴィヴィオが、チャンスとばかりに玄関に向かって駆けだす。流石に、ヴィヴィオ一人に対応させられないので、私は慌てて後を追いかける。
「あ! はやてさん!」
「やっほー、ヴィヴィオ♪ ママ達はおらへんの?」
「あれ? はやてちゃん!? どうしたのこんな時間に……」
「あ! ちょうど良かった! なのはちゃん、誕生日おめでとうな♪」
「え~~~! まさか、それを言いにわざわざ来てくれたの!? わ~! ありがとう、はやてちゃん♪」
「むっふっふ~、今日は更にすぺしゃるゲストや!」
「…………よう、なのは」
はやてちゃんがさっと横に移動すると、そこには赤髪のおさげをした女の子がぶっきらぼうな表情で立っていた。
「ヴィータちゃん!?」
「ん、まぁ私だって別に同僚の誕生日ぐらい祝ってやらねぇこともねぇ……」
「ヴィータちゃん……」
思わぬ来客に胸が熱くなる。しかし、客人を外に立たせっぱなしにしている事に気づいて、慌てて家の中に招き入れた。
「でも、まさかヴィータちゃんまでお祝いしてくれるなんて……ありがとう!」
リビングへ向かう途中で、私は素直な気持ちを二人に告げる。ヴィータちゃんも満更でもない表情で「おう」とだけ応えてくれた。はやてちゃんは、いつもの優しい笑顔を向けてくれていた。
「あれ? はやて、ヴィータ?」
「お邪魔しますー、フェイトちゃん……ってあれ?」
はやては、リビングについてすぐにこの場の異常な雰囲気に気づいたようで、周囲をぐるりと見渡すと、何か納得したように小さく一度だけ頷いた。
「よう、フェイト。元気そうだな」
ヴィータちゃんは気づいて無さそうで、フェイトちゃんに普通に話しかけている。
フェイトちゃんとの言い争いは、今日の所はここまでかなと思っていると、はやてちゃんがポンと私の肩に手を置くと、フェイトちゃんに向かって、
「フェイトちゃん、またそんな高価な物を贈って……ホンマ、成長せえへんなぁ~」
「だって、はやて……」
「どうせ、フェイトちゃんの事やらか、一年に一度だからとか言うたんやろ?」
「ぐ…………」
フェイトは痛い所をはやてに突かれ、言葉に詰まる。その隙をついてはやてちゃんは更に畳みかける。
「そんなんやったら、いつかなのはちゃんに見放されるよ!」
「それは困る~~!」
「じゃあ、ちゃんと反省するんやで?」
「………………うん」
渋々といった感じでフェイトちゃんが頷いた。相変わらずこういう交渉では本当に頼りになるなぁ、と私は感心してはやてちゃんの方を見る。はやてちゃんは、私の視線に気づくとパチリとウィンクを返してきた。
「なのはちゃん、これでエエかな?」
「うん、ありがと♪」
「ホントにフェイトの奴もこりねぇなぁ~」
「ううう……」
「あれ? ヴィータだって、未だにアイスの食べ過ぎで時々お腹壊してるやん、それと一緒やで♪」
「あー、もう! はやて、それは秘密だって……」
「プ、アハハハハ!」
私はそんな皆のやり取りが、可笑しくて、温かくて、自然と笑いが込み上げていた。
◇
この後、はやてちゃんとヴィータちゃんもプレゼントをくれた。ヴィータちゃんは少し恥ずかしそうにしていたのが可愛かった。明日から早速からかおうかなと、少し邪な事を考えてしまう。
そして、今は皆でのんびり談笑中。
────ピリリリ……
けたたましい電子音が私への通信が入った事を知らせた。この時間に通信は職場からの呼び出しが多いこともあり、フェイトちゃんとヴィヴィオの表情が硬くなったのに気付いた。
ゆっくりと通知パネルを見ると、そこには昔の教え子の名前が表示されていた。私は、小さく息を吐いて無意識に入っていた肩の力を抜くと、通話ボタンを押す。
「あ! なのはさん、お久しぶりです! スバルです!! あ、ティアナも隣にいます」
「お久しぶりです、なのはさん」
「うん、久しぶりスバル、ティアナ♪ どうしたのこんな時間に?」
「はい、今日なのはさんが誕生日だと聞いたので、電話しちゃいました♪」
「すみません、なのはさん。もう遅いから明日にしなさいって言ったんですけど……」
「そうなんだ、二人ともありがとう♪」
私は、二人の教え子の優しさに胸が熱くなった。
「……なのはさん……」
「……ティアナ?」
「誕生日、おめでとうございます……」
「うん、ありがとう」
少し低いトーンで言われて、つられて私の声も少し低くなる。
「……私が今ここで頑張れているのは、なのはさんの教えがあったからだと思っています」
「そんなことない、それはティアナの力だから自信持って良いと思うな」
私の言葉に、ティアナはゆっくり首を左右に振る。
「なのはさん……今でも辛い事は沢山あります。そういう時に思い出すのは、バカスバルの事となのはさんの事……なのはさんに教わった魔法は今でも私を助けてくれていて……だから、いつかこの魔法で今度は私が多くの人を助けていきたいと思います」
「ティアナ……」
「だから、本来はそんな資格ないかもしれないんですけど……今日は、なのはさんの誕生日を祝わせてください!」
「……もう、ティアナは真面目だなぁ」
ティアナの言葉は、ずっと胸の奥に入り込む。そこには不安や恐怖で小さくなって震えている自分が居て、温かく、真っ直ぐな言葉に照らされる。
気づけば、私は瞳から涙を流していた。いつの間にか、両手を愛娘と最愛の人に握られている。
「もー……、どうしてこのタイミングで……皆して私を泣かせにかかるかな」
そう呟いてしゃがみ込む。
手を繋いでいるヴィヴィオとフェイトちゃんも一緒にしゃがみ込んでくれた。そのさりげない優しさに、私は嬉しくて、嬉しくて涙が止まらなくなってしまう。
「ヴィヴィオ、フェイトちゃん……愛してる……ありがとう」
そう言って、人目もはばからず頬と唇にキスを落とした。
「……みんな、ありがとう……愛してるよ」
涙でしわがれた声でそれだけを伝える。泣いている顔を見られたくないから俯いたまま。
背中から優しい視線を感じながら、私はこの幸せな空間に身を委ねていた────。
(おわり)
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テーマ : 魔法少女リリカルなのは
ジャンル : アニメ・コミック